日本経営士会中部支部

2020-06-09

値引きをやめたらこんなに利益が出た

2020/6/9配信


「コンサルの現場 No.8」

企業にとって、価格の問題は悩ましい問題の一つです。

製品の価格は他社との競争になることも多いでしょう。

特に小売業は、1円でも安くして顧客を取り込む戦略を駆使する企業もあります。

今回は、販売価格についてアドバイスをした事例です。


値引きをやめたらこんなに利益が出た

◆ 値引きは当たり前

小売業の多くは、値引きをして売るのが当たり前になっています。


どうしてでしょうか。

「他の店が安く売っているから」

「他店との競争に勝たなくてはならないから」

という理由のようです。


実は、小売業は価格で勝負をするのが一番簡単な方法だといえます。

ですから、値引きを売り物にする小売店が後を絶ちません。

消費者にとっても、安く買える方が良いですからね。

しかし、そのために店の利益が減るようでは元も子もありません。

◆ 値引きをやめる

そこで、今回の事例です。


あるシューズショップから相談がありました。

もともと粗利率の低いお店です。

売上が昨年より10%ダウンしてしまいました。

そうなると、赤字転落が見えています。

何とかしなくてはなりません。


私は即座に「値引き販売の中止」を提案しました。

お客様にとっては「値上げ」ということになります。


お店はビックリです。

「値引きをやめたらお客様が来なくなってしまう!」


大丈夫です。

実際にはそんなことにはなりません。

もちろん、価格が安いから買いに来るお客様もいらっしゃいます。

しかし、お店の魅力は価格だけではありません。

◆ 値上げ体験

実は、値上げに一番反対するのは、販売スタッフです。

今まで「他より安いですよ!」と言って販売してきました。

そのセールストークが使えなくなってしまいます。

そうなると、お客様に商品をどう勧めていいのか分かりません。


そこで、全店の商品を値上げするのはもう少し後からにして、ある一部の商品を定価で販売することにしました。

販売スタッフに価格に慣れてもらうためです。

スタッフは恐る恐る定価で販売します。

接客を避けるスタッフも出るほどです。


ところが、しばらく「高値」販売を続けると、意外なことになります。

定価にした商品が、今までと同じように売れていくではありませんか。

スタッフの驚きは相当なものでした。

自分たちの常識が覆った瞬間です。

「値引きをしなくても売れるのだ」という体験が出来ました。


そして、少しずつ商品そのものの良さを伝えるセールストークが身について行きました。

さらには、商品の見せ方や陳列方法にも工夫をし始めたのです。

◆ その結果

その後、徐々に定価で売る商品の数を増やしていきます。

それでも、販売をしているとどうしても「他店の方が安い」という、一部のお客様の声が、まるで全員の声のように聞こえてきてしまいます。


ここは我慢です。

何か月もすると、そのお客様のつぶやきも、だんだん聞こえなくなりました。


その結果、このお店の業績はどうなったでしょうか?

一年後、粗利率が5%上がり、売上も回復しました。

良かったですね。


過去のやり方や固定観念にしがみついていても、未来はありません。

値引きで勝負をするのではなく、それ以上にお店の魅力を伝えられれば、お客様は離れないのです。

編集後記

小売店にセールや値引きを勧める経営コンサルタントも多いでしょう。

その代わり、仕入価格を抑えるようにアドバイスをすることになります。

それでは、仕入先にとっては喜ばしいことではありません。

それよりも、高く売れる方法をアドバイスすることの方が小売店のためです。

高く売る方法は、考えれば結構アイデアが出てきます。

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