日本経営士会中部支部

2021-05-18

5フォース分析

2021/5/18配信


「ビジネス理論かんたん解説 No.24」

今回ご紹介するのは「5フォース分析」です。


5フォース分析

◆ 5フォース分析とは

5フォース分析は、アメリカの経営学者マイケル・ポーター教授の提唱した分析手法です。

経営戦略の分野で最もよく知られたモデルの一つで、「5つの競争要因」とか「5フォースモデル」とも呼ばれます。

これは、企業の外部分析をするためのツールであり、企業にとっての「脅威」を分析するものです。

この分析によって、企業がその業界(市場)に参入すべきかどうか、また競合対策としてとるべき施策は何かを考えることになります。


そして、企業にとって分析する競争要因(脅威)は、次の5つです。

  • 業界内での競争(競争業者)
  • 業界への新規参入者
  • 代替品や代替サービスの存在
  • 売り手(サプライヤー)の交渉力
  • 買い手(顧客)の交渉力

◆ 5つの競争要因

これらの5つの要因を分析することで、自社の取るべき戦略を決めていきます、もう少し詳しく説明しましょう。


1)業界内での競争(競争業者)

 業界内に競合企業が増えれば増えるほど競争が激しくなり、収益性は落ちます。

 ここで分析するのは、競合各社の数、知名度、ブランド力、資金力などです。


2)業界への新規参入者

 新規参入しやすいかどうかは、業界によって違います。

 異業種からの参入ハードルが低ければ、多くの参入者によって価格競争が起こり、収益性が下がります。

 この場合の分析ポイントは、市場の規模、参入者の技術レベルやブランド力です。


3)代替品や代替サービスの存在

 代替品とは、自社の製品やサービスに代わる価値のものを指します。

 同業他社の競合商品ではありません。

 代替品が登場すると、市場が小さくなり収益性が落ちます。

 例えば、固定電話・カメラに対するスマートフォン、書籍に対する電子書籍といった業界の外から来る代替品の脅威のことです。

 ここでは、自社製品との質的な違い、コストの差、代替品として乗り換える手間やコストを分析します。


4)売り手(サプライヤー)の交渉力

 売り手と自社との力関係のことです。

 自社がメーカーであれば、原材料を供給する企業、小売業であれば卸会社との力関係を示します。

 売り手の数が多くなれば、自社の交渉力が強まりますし、逆の場合は弱まります。

 売り手の数や、売り手を乗り換えるコストなどが分析ポイントです。


5)買い手(顧客)の交渉力

 消費者や顧客といった買い手と自社との力関係を言います。

 競合が多く価格競争が激しくなれば、買い手の力が強くなり自社の収益性は低くなります。

◆ 5フォース分析の具体例

1)マクドナルド

  • 競争業者:モスバーガー、ロッテリア、バーガーキングなど強力な競合会社がいます。とはいえ、多すぎるわけではありません。
  • 新規参入:今のところ、マクドナルドを脅かすほどの新規参入業者はいません。
  • 代替品:ラーメン、餃子、カレー、牛丼、回転ずし、コンビニの総菜・弁当など代替品の脅威は大きいです。
  • 売り手:パンやハンバーグの材料を供給する会社にとって、マクドナルドの販売力は価格交渉力を弱めます。
  • 買い手:一般消費者が他店に流れないためには、PRによる情報提供と商品差別化が必要です。


2)旅行業界への参入

  • 競争業者:国内1万社を超える旅行会社の存在により、競争が激しいです。
  • 新規参入:1万社もあることから考えると、参入は比較的容易な業界です。ただし、その分だけ利益率は低くなります。
  • 代替品:旅行を中止して購入する商品、出張の代わりのテレワークなど、代替品は多いです。
  • 売り手:航空会社、JRなどの郵送機関、ホテル、旅館などの宿泊施設が売り手です。その力関係は季節によって変わり、小さな旅行会社は売り手への交渉力が弱いと言えます。
  • 買い手:消費者(買い手)はインターネットで簡単に予約ができるので、旅行会社に対する買い手の力が強くなり、旅行会社の利益は低くなるでしょう。


いかがでしょうか。

5フォース分析は、SWOT分析など他の環境分析ツールと組み合わせて行うと、より効果的です。

編集後記

コロナ禍で、社会や資本主義のあり方が変化していっています。

同じように、競争のあり方も変化していくでしょう。

ポーター教授の理論も万全とは言えません。

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