日本経営士会中部支部

2021-06-23

在庫問題の相談

2021/6/23配信


「コンサルの現場 No.76」

商品が売れるのは嬉しいですが、それなりの知恵が要ります。

また、商品を仕入れるのは楽しいですが、うまくコントロールしないと在庫になってしまいます。

ですから、どちらも決して簡単な作業ではありません。

そこで、今回は在庫に関するコンサルティング事例です。


在庫問題の相談

◆ 利益はどこへ

小売店の経営者から、在庫が増えて困っている、というご相談がありました。

「売上は伸びているのに、少しも儲かった気がしない」

「売った利益はどこへ行ってしまったのだろう」

どうやら、利益が在庫になってしまっているようです。


そこで、お尋ねしました。

「あなたのお店では、どのように商品管理をしていますか?」

すると、

「どんな商品が入荷して、どんな商品が売れていったかを調べています。

また、どんな商品が在庫にあって、それがどこに置かれているかが分かるようにしています。

さらには、品切れしている商品がないかとか、売れずに残っていないかとか確認をしています。」

それなりに、商品管理はしているようです。


「では、商品回転率は年に何回転していますか?」とお聞きすると、

「年に2回転くらい」とのこと。

同業者の平均商品回転率は4回転ほどですから、かなり低い数字です。

これが利益が出ない一つの原因でしょう。

ですから、商品回転率をあげることをご提案しました。

◆ 商品回転率をあげる

この商品回転率を上げる方法があります。

商品回転率の算式は「年間売上高÷平均在庫高」です。

この式から、回転率を上げる方法が3つ分かります。


1)売上高を上げる

2)平均在庫高を減らす

3)両方行う


ですね。


では「売上を上げる」にはどうしたらいいでしょう。

方法は限りなく考えられますが、一番手っ取り早いのは「売れているものを売る」ということです。

このお店は、POSシステムで商品管理をしているので、「売れている商品」はすぐに分かります。

その売れている商品を重点的に売れば、回転率が上がるのです。


二番目の、「平均在庫を減らす」には、「売れていない商品をその後仕入れない」ようにしなければなりません。

そして、「売れていない商品を早く売場からなくす」ということが必要です。

ですから、不要な商品在庫を抱えないためのルールを作っていただきました。

◆ 仕入担当者の意識

さらに、このお店は仕入の仕方にも問題がありました。

商品仕入れを担当者任せにしていたのです。

もちろん、仕入計画は作ってありますが、なかなか計画通りに進みません。

それはそうです。

仕入れ担当者は、「品切れ」を怖がりますので、どうしても多めに仕入れてしまいがちです。

これも在庫がふくらむ原因となります。


そこで、「目標商品回転率」を決めて、仕入担当者に意識をしてもらうことにしました。

すると、一年後、商品回転率が3回転を上回るところまで来たのです。

やればできます。

これで在庫はかなり減りました。

今は4回転を目指して頑張っているところです。


とはいえ、まだまだ十分な利益が出ていません。

この次の目標は、「交差比率」を考えて、仕入と販売をすることです。

「交差比率」の算式は「粗利率×商品回転率」。

この数値が高いほど、お店のお金の流れがよくなります。

お店にとって、さらなる目標が出来ました。

頑張って欲しいです。

編集後記

在庫は、気を抜くとすぐに膨れ上がります。

「売れない商品」を処分するのは勇気がいりますが、処分基準を作っておくのも一つの方法です。

そして、在庫問題は小売店だけでなく、卸、メーカーにとっても重要なことは言うまでもありません。

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