10月度中部支部研究会【報告】
日時 : 2025年10月18日
会場 : タワーラウンジ・カシメ (名古屋TV塔3階)
■第1部
演題 : 「品質とは? 当たり前品質と、顧客の心に刺さる魅力的品質(商標品質)」
講師 : 大坪 康浩 経営士 技術士

私は、機械メーカーに勤務しており品質保証を担当しています。定年を数年後に控え、独立して品質をテーマにコンサル開業を志しています。そこで今回、経営とは少し違う切り口で、私のコンサルメニューのひとつである「魅力品質作り」をテーマとして紹介させて頂きました。
品質は「お客様の期待を満足させる度合い」と捉えることができます。
さらに品質は大きく分けて二つの考え方があります。第一に「当たり前品質」。これは備わっていて当然の品質のことです。椅子が壊れずに座れる。家電が説明書通りに動く。注文通りの料理が出てくる等です。しかしビジネスにおいて、品質で他者を凌駕するためには、これだけでは不十分です。必要な「当たり前品質」を必ず確保することに加え、「魅力品質」により差別化し、競争力を高めることが必要です。
魅力品質とは「なくても不満はないが、あると感動する品質」のことです。例えば、ホテルの部屋に手書きの誕生日メッセージとギフトが置かれていた。車庫入れが苦手な人のためにクルマが自動で縦列駐車をしてくれる。引き出す時にくっ付いたり破れたりしないサランラップ(筆者要望)、等です。
そして魅力品質を支える裏側には、確固とした独自の品質基準があります。「関アジ」をご存じですよね。佐賀関でとれたアジ全てを言うのではありません。大変厳しい品質基準を満たしたものだけが名乗れる商標です。「揖保乃糸」も然りです。揖保乃糸という会社の商標ではありません。協同組合によって厳格に管理された基準にパスしたメーカーの素麵だけが名乗れます。さあ、ほかにも色々「魅力品質」を備える製品やサービスが作れそうですよね。ですがもう一度お伝えします。そこには確固とした「品質基準」が必要なのです。
私のコンサルでは、この「魅力(商標)品質」と、それを支える「独自品質基準」作りの体系化を実施します。
記:大坪康浩
■第2部
演題 : 「経営戦略史のトレビア」
講師 : 江口 敬一 経営士

史実、人物にまつわるトレビア(ムダ知識)、ノイズ(ムダ情報)から戦略理論の本質を探ることをテーマに、今回は、戦略理論の起点である「科学的管理法」と「人間関係論」に関し、「統計学の母」といわれる人物は誰か?「アフタヌーンティーの習慣」はなぜ生まれた?などクイズ形式で、その本質に迫るアプローチを試みました。以下概要。
・研究会開催日の10月18日は「統計の日」。「統計学の母」とされるのは、「近代看護の母」でもあるF・ナイチンゲール。クリミア戦争(1853~56年)では、看護団を率い前線の兵舎病院で看護活動にあたった。病院での死因全ての統計をとり、死亡原因の約80%が感染症であるとイギリス議会に報告。病院の衛生環境を改善する提案を行なうも、議会は、「戦死は戦傷によるもの」との固定観念から報告と提案を無視。
・そのため彼女は、円形グラフの扇状の面積で、死因別の死者数が一目で分かる「バッツ・ウイング」「コックスコム」など独創的なグラフを考案し、統計とともに提出。議会は一転、彼女の報告と感染症対策を受け入れ実施した結果、死亡率は、43%から5%にまで激減した。
・ナイチンゲールに関するトレビアは、「数値で現状を定量的に把握し、科学的根拠に基ずき課題解決を図る」ことが、後の科学的管理法(F・テーラー)、統計的品質管理(E・デミング)など現代経営のオペレーションに通じる、戦略理論の本質であることを示している。
・彼女が兵舎病院で最初に行ったのが、トイレの清掃。衛生管理を徹底し、「看護覚え書」等で看護教育に貢献したナイチンゲールは、「5S(清掃・清潔・整理・整頓・躾)の母」でもあり、統計と独創的なグラフを使い「数字でモノを言い、数字を見える化する」手法は、「ビジュアル・プレゼンテーションの母」と呼ぶにふさわしい。
・アフタヌーンティーの習慣は、産業革命で生まれた。英国では午後の時間帯に、工場労働者に砂糖を入れた濃い紅茶を提供し、糖分とカフェイン効果で労働者の生産性向上が図られていた。これがブルジョワ階級にも広がり文化的習慣となった。
・アフタヌーンティーの習慣は、後のホーソン実験など人間の生産性に着目した「人間関係論」(E・メイヨー)にも通じ、人的資本の本質は、「ヒトの生産性向上」であることを示している。C・シャネルの女性の「パンツスタイル」「スーツにポケット」もこの本質を示唆するトレビア、ノイズである。
・人的資本主義、健康経営、ウェルビーイングも、本質である労働生産性向上の視点を欠き、「ヒトを大切しよう」だけであれば、中小企業を圧迫する負の圧力になりかねない。 ・本質とは、「時を経ても変わらない原理・原則」のこと。本質を知るには、源流までさかのぼることが大切、その考える過程が経営の「実戦知」にもつながる。
記:江口敬一










