人材育成の基本は、マインドセット・スキルセット
2022/1/11配信
「実践経営講座 No.5」
人材の育て方についてのお話です。
人材育成の基本は、マインドセット・スキルセット
◆ マインドセットとスキルセットの意味
人材の良し悪しをはかるのに態度という言葉がよく使われます。
態度の「態」の字を分解すると「心」と「能」になります。
「心」に下支えされて、「能」が「心」の上に乗る形で整えられた漢字です。
「度」には、度合い、整い具合いとの意味があります。
「態」の字の構成と「度」の意味からすると、「態度」とは「心」と「能」の度合い、整い具合と言えそうです。
カタカナにすれば、「心」は「マインド」、「能」は「スキル」、「度」は「セット」。
マインドをベースに、スキルをセットする。
心を整えたうえで能を養う。
態度という言葉からは、「マインドセット」と「スキルセット」が、人材育成の基本であることが読み取れます。
◆ 能力開発の前提と職務遂行能力
能力開発の前提は、マインドセットです。
マインドセットは、業務を遂行するうえでの心構えを整えることです。
- 経営理念、ビジョンなど根本となる価値観を共有する「意識」
- 目標達成に向けて職務を完遂する「意気」
- 職務を通して自己実現を目指す「意欲」
マインドセットの前提となるのは、自律的な意識、意気、意欲を引出す環境を整えることです。
そのための成果に報いる報酬制度、キャリアアップの支援体制など、仕組みを整備するのは、経営者の役割です。
またマインドセット次第で、その後のスキルアップの度合いも決まって行きます。
スキルセットは、基本職務遂行能力と専門職務遂行能力の組み合わせです。
基本職務遂行能力は、職種、業種の専門を問わず、どのような仕事をするにも必要となる基本的なスキルです。
読み、書き、そろばん、常識的知識、最近ではITリテラシーなどです。
専門職務遂行能力は、職種や業種により専門的に必要となるスキルです。
経理職なら簿記、財務会計ソフトの扱い、営業職なら営業スクリプト、マーケティングスキル、製造業であれば、生産管理、品質管理のスキルなど多岐多様です。
いずれにせよ専門職務遂行能力は、基本職務遂行能力をベースに養われるものです。
基本が疎かなうちに専門的な能力を身に着けさせようとしても、時間を無駄にするばかりです。
始めにマインドセットで心構えを整え、スキルセットで基本を身に着けさせ、そのうえで専門スキルを養い、成果を出せる組織人に鍛え育てるのが、人材育成の基本です。
◆ 採用と人材戦略
「早く仕事を覚えて、御社の業績向上に貢献したいと思います。」採用時の意気込みは、いったい何処へ行ったのか。
お金と時間を費やし採用しても、期待に応えてくれる「人財」もいれば、いくら手を尽くしてもモノにならない「人罪」レベルの人も少なからず存在するのが現実です。
モノになる、ならないは、採用してみなければ分かりません。
正社員採用を前提に、1年間は契約社員、1年後、採用時に約束した職務遂行レベルに達していれば正社員契約、でなければ契約満了という採用の仕方も一考かもしれません。
「選んで育てる」も人材育成の選択肢の一つです。
「企業は人なり」であれば、経営計画には人材を的確に採用し、成果の出せる人材を育てる戦略をしっかりと落とし込んでおきたいものです。
編集後記
「賢者と愚者との別は学ぶと学ばざるとにより出来るものなり」。
『学問のすゝめ』の一節は、マインドセットにふさわしい言葉かと思います。
もっとも、学校で習うのは「天は人の上に人を造らず」の一節のようですが。
学校では教えてくれない、社会人、組織人として必要なことを教育するのも企業の役割なのかもしれません。
(文責:経営士 江口敬一)