社長が求める真の経営コンサルタントとは
2023/1/3配信
「実践経営講座 No.22」
「経営コンサルタントのあるべき姿」についての話です。
社長が求める真の経営コンサルタントとは
◆ プロコンの最低条件
プロコンとは社長の側に立ち、経営目標達成に向け、社長のサポートに徹するプロの経営コンサルタントのこと。
ダメコンとは、顧問料と時間を無駄に費やさせ、社長を疲弊させるダメな経営コンサルタントのこと。
プロコンかダメコンかは、主語の違いで見分けられます。
プロコンは「○○社長」、ダメコンは「御社」と主語が分かれます。
固有名詞で「○○社長」であれば、クライアントが誰であるのか、誰のために働くのかの認識が明確です。
「御社」では、クライアントは社長だけなのか、従業員も含めているのか認識が不明確です。これでは誰のために働いてくれるのか心配です。
経営と所有が一体化している中小企業の場合、社長が絶対的なクライアントです。
中小企業の社長の悩みの大部分はヒトに関するもの。モノやカネの問題も、結局はヒトに帰結します。
社長にとって問題を解決する上で、最大のステークホルダーが従業員という場合も多々あります。
プロコンは、使う側の社長と使われる側の従業員とでは、本質的な価値観に違いがあることを実践から認識しているものです。
主語が「○○社長」であることは、社長の側に立ち、社長の視点で問題解決を支援するプロコンの最低条件です。
◆ 経営コンサルタントの役割
経営者として、筆者が多くの経営コンサルタントに関わってきた経験では、プロコンとダメコンの違いには、他にもいくつかの共通点があります。
プロコンは固有名詞、数値、事実、実践体験で語り、ダメコンは普通名詞、概念、憶測、経営理論で語ると言うことです。
プロコンは社長の協力者に徹し、ダメコンは社長に指導したがることも、大きな違いです。
戦略は、社長の頭の中にあります。問題と課題を見出し、解決策を考え、実行するのも社長です。
人間は、自分の意思で考え納得できない限り、考えを行動に移すのは難しいもの。社長も同じです。
経営コンサルタントの役割は、社長の頭の中を整理し、社長自身が戦略、解決策を導き出し、実行に移せるよう支援すること。
そのために社長が必要とする情報、視点、考え方、手法、実践体験から得た参考事例を提供することが、経営コンサルタントの仕事です。
社長が導き出した戦略、解決策を全社で共有できる環境作りの支援も、経営コンサルタントの役割です。
◆ 経営コンサルタントの仕事
社長本来の仕事は、ビジョンを示し、実現のための戦略と計画を描き、経営目標を達成すること。
経営計画の進捗をモニタリングし、経営資源の分配、部門間の連携を調整する経営管理も社長にしかできない仕事です。
中小企業の社長の多くはプレーイングマネジャーであり、社長本来の仕事に徹し切れていません。それが問題であることは、社長自身が一番自覚しています。
経営コンサルタントの仕事は、戦略や解決策をもっともらしい分析資料とロジックやフレームワークで、社長に押し付けることではありません。
社長が本来の仕事に徹せられる環境を整えることが、経営コンサルタント本来の仕事です。
経営コンサルタントの仕事は、以下の4つです。
- 社長のビジョンを理解したうえで、社長の頭の中を整理整頓する。
- 社長が戦略、解決策を導き出すための情報と手法を提供する。
- 社長の戦略、解決策を実行するための手順と仕組みを提案する。
- 経営目標達成まで、社長のより良き協力者として伴走し続ける。
経営コンサルタントの存在意義とは何か。
折に触れ「経営コンサルタントのあるべき姿」を問い直してみたいものです。
編集後記
健康経営を語るコンサルタントの主語は「従業員」、述語は「働き方改革」。
環境経営を語るコンサルタントの主語は「社会」、述語は「SDGs」。
主語は「社長」、述語は「経営目標」で語れる経営コンサルタントの割合は、パレートの法則未満かもしれません。
プロコンとの邂逅には、社長自身にもコンサルタントを見極める眼力が必要です。
(文責:経営士 江口敬一)