鶏口となるも牛後となるなかれ(史記)
2020/5/12配信
「中国古典から学ぶ経営 No.6」
今回は「史記」からの言葉です。
鶏口となるも牛後となるなかれ(史記)
◆ 史記
「史記」は前漢時代に司馬遷によって書かれた、百三十巻の中国歴史書です。
司馬遷は漢の武帝に仕え、歴史編纂の官職についていました。
この「史記」には、中国伝説上の黄帝の時代(紀元前2500年頃)から前漢武帝まで(紀元前80年頃)の歴史が書かれています。
こうした文献が伝えられていること自体が素晴らしいですね。
◆ 蘇秦
「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉は、史記の中に出てきますが、これは、中国戦国時代の蘇秦が発した言葉です。
日本人にも馴染みのある言葉ではないでしょうか。
蘇秦は「合従連衡」の「合従策」を唱えたことでも有名で、戦国時代の強国「秦」の周辺国である「燕、趙、韓、魏、斉、楚」の六国を説いて同盟を成立させ、秦に対抗させました。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、その韓を説得した時に使われました。
◆ 鶏口牛後
この言葉の意味は、大きな組織につき従うよりも、小さな組織で良いからそのトップに立て、ということです。
略して「鶏口牛後」とも言われます。
例えば、優秀な人材も大企業にいるうちに平凡な人間になってしまう、ということがよくあるでしょう。
それはどうなんだと、蘇秦は言っているわけです。
日本では、戦後しばらく安定した生活を求める時期が続きました。
しかし、今では大企業を飛び出してベンチャー企業を立ち上げる人も増えています。
就職をせず最初から起業をする人も多いです。
そうした人材にとって、この言葉は心強いですね。
ベンチャー企業にとっては、戦国時代のように先の見えない時代の方がチャンスが多くあります。
今の日本は、そんな時代になってきているのではないでしょうか。
あなたや、あなたの周りではどうでしょうか。
「鶏口牛後」の人や企業はいますか。
◆ 経営に活かす
中小企業でも、独自の技術や独自のノウハウがあれば、その世界のトップに立つことが出来ます。
例えば、GAFA、ユニクロ、ソフトバンク、スターバックスといった企業は、まさに「鶏口牛後」から始まっているのではないでしょうか。
また、大きな組織に属していたとしても、その中の事業や業務でトップを目指すことは出来ます。
そうした気概を持つことが必要です。
そんなことを、この言葉は教えてくれています。
編集後記
史記の中には、日本でも使われている言葉や、面白い物語が詰まっています。
例えば「韓信の股くぐり」「鴻門の会」「臥薪嘗胆」「管鮑の交わり」「国士無双」「四面楚歌」「宋襄の仁」「傍若無人」「屍を鞭打つ」いくつかは耳にしたことがあるでしょう。
また、蘇秦の「合従策」に対して、「連衡策」を唱えたのは秦の宰相の張儀でした。
結果的に連衡策が功を奏して、秦が中国を支配するようになったわけです。
そのあたりの話も史記には詳しく書かれています。