生産性って何のこと?
2023/11/7配信
「儲かる会社になるヒント No.37」
テーマは「生産性って何のこと?」です。
わが国では、中小企業の数が、全体の99.7%を占めています。
ですから、中小企業の利益が上がらないことには、国のGDPも上がりません。
そのため、中小企業の生産性を上げることが、国の方針にもなっています。
生産性を上げるには、どうしたら良いでしょう。
生産性って何のこと?
◆ 経営者からの質問
流通業の経営者から「生産性って何?」というご質問をいただきました。
意識の高い人ですね。
とはいえ、生産性って説明がむつかしいとは思いませんか。
辞書を引いてみますと、「生産の能率をあげること」だとあります。
これだけではよく分りません。
そこで、「生産管理」のテキストを開きます。
そこには、「生産性とは投入量に対する産出量のこと」ありました。
その計算式も書いてあります。
【生産性=産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)】
つまり、これが「生産性」の正しい答えです。
しかし、これでも何のことやらよく分りませんね。
テキストには、「産出量」とは生産金額や付加価値などのことで、「投入量」とは、労働量、投下資本、設備、原材料などにあたる、とあります。
ますます難しくなってきました。ここは、ちゃんと理解をしなければいけません。
◆ 生産性を理解する
思い出してみましょう。「財務」のテキストに出てくる有名な生産性があります。
「労働生産性」です。その計算式は【付加価値額÷従業員数】。
つまり、従業員一人当たりの粗利額のことです。すると、ここから次のことが分かります。
粗利額が一定だとしたとき、従業員をたくさん雇えば一人当たりの粗利額が少なくなり、少ない従業員の場合では、一人当たりの粗利額が多くなります。
ですから、この場合は従業員(インプット)を少なくすることが、生産性を高くすることです。
また、逆に従業員の人数が一定だとしたら、粗利額を増やす努力をすれば生産性が上がり、安売りばかりで粗利額が減れば生産性が下がる、ということになります。
何となく、生産性について分かってきました。
これで、生産現場である工場の生産性も理解できそうです。
例えば、設備投資(インプット)に対して、どのくらいの売上や生産量(アウトプット)があるかというのが、生産性になります。
また、材料費(インプット)を抑えて売上(アウトプット)を維持または増加することも生産性です。
つまり、生産のために投入したものが、どれだけの売上や利益につながるかという数字が「生産性」ということになります。
◆ 流通業の生産性
とはいっても、これは製造業での数字です。
ご質問をいただいた経営者の答えにはなっていません。
そこで、流通業の生産性について考えます。もちろん、「労働生産性」は重要な指標です。
しかし、その他にも生産性を測る要素はたくさんあります。
それらの要素をもとに、流通業の生産性計算式をご紹介しましょう。
それは、つぎのようなものです。
【顧客生産性=売上高÷顧客数】
【仕入生産性=売上高÷仕入額】
【PR生産性=売上高÷広告宣伝費】
【改装生産性=増加売上高÷店舗改装費】
【外商生産性=粗利額÷外商活動時間】
分母・分子の数字をどのようにすれば生産性が上がるのでしょう。考えてみてください。
そして、これらの計算式を経営に役立ててください。
ただし、次の生産性の式は使ってはいけません。
【売場面積生産性=売場面積÷従業員数】
これは、大型流通業だけに通用する考え方です。くれぐれもご注意を。
編集後記
実は、ここにあげた流通業の生産性計算式は、筆者が考えたものです。
テキストには載っていません。
国は、どんな「生産性」のことを言っているのでしょう。
恐らく、頭にあるのは「労働生産性」だけかもしれません。
(文責:経営士 梅本泰則)