経営理念でメシは食えない?
2024/3/26配信
「続・コンサルの現場 No.44」
テーマは「経営理念でメシは食えない?」です。
あの事件を起こしたビッグモーターには、立派な経営計画書がありました。
その中に、「幹部には部下の生殺与奪権を与える」という文言があります。
スゴイ会社ですね。
「目標利益を確保して、会社を存続発展させる」という理念を実践するための、一つの方法だったかもしれません。
経営理念が正しく理解されなければ、間違った方向に行ってしまうということでしょう。
経営理念でメシは食えない?
◆ 経営理念のない会社
経営に最も大切な「理念」について考えてみます。
ある中小企業の経営者にたずねてみました。
「経営理念があれば、教えてください」。
きょとんとされていました。
そりゃそうですね。中小企業の多くが、経営理念などというものは持っていないです。
経営者の頭の中には、それらしきものはあるはずですが、言葉に表されてはいません。
その証拠に中小企業50社のホームページを見てみました。
すると、「理念」をうたってあるページを持っている企業は数社でした。
続いて、さきの経営者に聞いてみました。「どうして経営理念がないのですか?」。
すると、こんな返事が返ってきます。
「経営理念でメシは食えないよ」。
なるほど。これは本当でしょうか?
そこで、参考に大企業500社の経営理念が紹介してある本を見てみました。
すると、分かることがあります。
それは、理念は決して簡単に作られたものではない、ということです。
どの理念も、本当に考えに考えて考え抜かれたあとに生み出された言葉だということが分かります。
ですから、大変重い言葉なのです。
◆ 理念が文化になる
理念を持つ会社には、社員で唱和をしているところが多くあります。
実は、これは大事な行動です。最初はいやいや唱和をしている社員もいます。
しかし、毎日唱和を続けていると、自然とその言葉が頭に入ってくるものです。
何年も続けると、暗唱さえ出来るようになります。
無意識のうちに、理念が皆に刷り込まれます。
すると、やがてそれが会社の文化となるのです。
それが、社員が働く意味にもなります。これが、経営理念の役割です。
また、この経営理念がなければ、それぞれの社員の向かう方向がバラバラになってしまいます。
そうなると、お客様も会社の方向がよく分かりません。
それでは、良い業績が上げられるはずはありません。
つまり、経営理念はメシを食うために必要なものなのです。
理念でメシを食えないというのは、間違っています。
◆ 経営理念を作る
それならば、理念を作るしかありません。
どんなふうに作るといいのでしょう。むつかしくはありません。
まず、「どんな会社でありたいか」ということを考えます。
たとえば、「お客様、取引先、社員から信頼される誠実な会社」とか、
「お客様の生活や文化の向上に奉仕し、すべてのお客様に喜んでいただける会社」といったことです。
それを考えれば、理念作りに近づけます。
また、「社員にどんな行動をして欲しいか」ということも考えるといいです。
たとえば、「いつも顧客に感謝する」とか、「基本を忠実に守る」とか、「常に相手の立場を考える」とか。
これらを分かりやすくまとめれば、理念ができあがります。
経営理念は会社の憲法です。
公表されたものを見ると、どれも本当にそうありたいと思うことが書かれています。
市販の経営理念集を参考に、自社の理念を練り直すのもいいですね。
編集後記
コンサルティングをしている会社の経営計画書を作る時は、まず「経営理念」の策定から入ります。
ところが、すでに経営理念がある場合は良いのですが、無い場合は実に難しい作業です。
何度も何度も作り直してみても、なかなか納得の出来る文言になりません。
そんな時は、経営理念策定を後回しにします。
計画書を作っていく過程で、徐々に理念が見えてくることも多いからです。
(文責:経営士 梅本泰則)