プロダクトポートフォリオ分析
2020/7/7配信
「ビジネス理論かんたん解説 No.9」
今回ご紹介するのは「プロダクトポートフォリオ分析」です。
プロダクトポートフォリオ分析
◆ プロダクトポートフォリオ分析とは
1960年代に米国のボストン・コンサルティンググループ(BCG)が、経営戦略、事業戦略を分析する手法として開発した理論です。
「PPM分析」とも呼ばれます。
企業が多角化すると、どの事業分野に重点的に投資をすれば効果的かということが、見えにくくなってきます。
そこで、BCGはその企業の事業分野を「市場の魅力度」と「市場の競争力」という2つの観点から、4つのボックスに分類することを提唱しました。
それが有名な「花形」「問題児」「金のなる木」「負け犬」です。
「市場の魅力度」とは市場の成長率のことで、「市場の競争力」とは自社の相対的なマーケットシェアをさします。
つまり、PPM分析は、
分野・事業・製品に関するキャッシュフローは、
市場成長率と相対的マーケットシェアの組み合わせによって決まる、
という考え方です。
◆ 花形、問題児、金のなる木、負け犬
そして、
「花形」に相当する分野・事業・製品は、市場成長率も相対的マーケットシェアも高く、キャッシュも稼げますが、投資も多くなります。
「金のなる木」は、市場成長率は低いものの相対的マーケットシェアの高い分野・事業・製品です。
この分野・事業・製品では、投資を上回るキャッシュが回収できますので、金のなる木となります。
「問題児」に当たる分野・事業・製品は、市場成長率が高いものの相対的マーケットシェアは低いです。
稼げるキャッシュよりも多くの投資が必要になります。
「負け犬」は、市場成長率も相対的マーケットシェアも低い分野・事業・製品です。
そのため、キャッシュフローはマイナスとなります。
そこで、それぞれのボックスに分けられた分野・事業・製品は、以下の戦略が検討されることになります。
花形:現在のシェアを維持するか、さらに拡大する
金のなる木:投資を抑えて資金を回収する
問題児:積極的な投資で「花形」に育成するか、もしくは撤退する
負け犬:撤退、売却、縮小を考える
PPMはとてもシンプルなので、使い勝手の良い分析手法として活用されています。
また、その後GEとマッキンゼーは「市場成長率」の代わりに「事業単位の地位(自社の強み)」を要素にしたポートフォリオ分析法を提唱しました。
さまざまな応用がされている分析法です。
◆ PPM分析の具体例
例えば、このように分析をされます。
〈日本コカ・コーラ〉
花形:コーヒードリンク事業
金のなる木:コーラ飲料事業
問題児:紅茶ドリンク事業
負け犬:ウーロン茶事業
〈セブン&アイHD〉
花形:コンビニエンスストア事業(金のなる木でもある)
金のなる木:コンビニエンスストア事業
問題児:電子マネー事業
負け犬:百貨店事業
〈日本郵政〉
花形:金融窓口事業
金のなる木:生命保険、銀行事業
問題児:国際物流事業
負け犬:郵便事業
といった感じです。
それぞれの事業の戦略を考える上での指針となります。
一度皆さんも身近な企業や自社のPPM分析をされてはいかがでしょう。
編集後記
ちなみに、ポートフォリオとは「板ばさみ」とか「書類入れ」のことです。
PPM分析は多くの経営コンサルタントが活用しています。
しかし、PPM分析は分析者の意思が入ってしまいやすいことや、それぞれの事業間でのシナジーが考慮されていないといったことが難点です。
また、PPM分析が効果を発揮しない業界もあります。
どの戦略分析ツールも万能ではないということですね。