人はすべからく事上にあって磨くべし(伝習録)
2020/9/15配信
「中国古典から学ぶ経営 No.12」
今回は「伝習録」からの言葉です。
人はすべからく事上にあって磨くべし(伝習録)
◆ 伝習録とは
伝習録は中国明の時代の儒学者、王陽明の言行録です。
王陽明の思想は「陽明学」として体系づけられました。
そこに出てくる「知行合一」という言葉は有名ですのでご存知でしょう。
日本には江戸時代に入ってきましたが、朱子学との対立が起こりました。
同じ儒教ですが、時代によって解釈が違ってくるのですね。
◆ 言葉の意味
人は生活や仕事など、毎日の実践を通して自分を磨いていくべきだ、という意味です。
「事上」とは「実践」のことで、「事上磨錬」という言葉にもなっています。
自分を磨くには、優れた本を読んだり、優れた人の話を聞いたりすることは大切です。
しかし、陽明はそれだけではいけないと言っています。
学んだことを実践し、体で覚えてこそ本当に自分の身に付くということです。
これは陽明学の真髄ですね。
陽明学に強い影響を受けた吉田松陰は、まさに「事上」を大切にして行動を起こしました。
日本の歴史にも深くかかわっている学問です。
◆ 経営に活かす
私の周りにも勉強家は多いですが、読書やセミナーの段階でとどまっている人も見かけます。
本や人から知識を得るのに比べて、行動に移すことがはるかに大変です。
とはいえ、王陽明は歴史や書物に学ぶことを軽視しているわけではありません。
その上で実践をせよと言っているのです。
これは、経営者にとって大切なことではないでしょうか。
いえ、経営者に限ったことではありません。
従業員全員にとって大切なことです。
ですから、本を読んだりセミナーに参加した時は、気付いたことをメモにするのを習慣にしましょう。
そして、同時に「今日から行動すること」を書き出して実行することです。
そのことで、きっと事業も人間も成長していくことでしょう。
編集後記
陽明学は、吉田松陰ばかりでなく、大塩平八郎や西郷隆盛など多くの著名人に影響を与えました。
一種の革命思想かもしれません。
「事上磨錬」は「事上錬磨」とも言います。
講談社創業者の野間清治氏は、「事上練磨」「人上練磨」「書上練磨」を合わせて「三上練磨」と言っています。
この言葉も含蓄のある言葉ですね。