経(はか)るに五事をもってする(孫子)
2020/2/18配信
「中国古典から学ぶ経営 No.2」
今回は「孫子」からの言葉です。
経(はか)るに五事をもってする(孫子)
◆孫子とは
「孫子」を知らない方はいないでしょう。
孫子は中国春秋時代末期の紀元前5世紀から前6世紀頃に、呉の孫武によって書かれた兵法書です。
以来、孫子は世界中で読まれてきました。
ナポレオンも孫子を愛読していたそうです。
日本でも武田信玄が掲げた「風林火山」は孫子からのものです。
現代では、経営者の多くの方が読んでいます。
経営戦略のヒントになることが満載だからでしょう。
リーダーシップの参考になる言葉も多いので、熟読されることをお勧めします。
◆言葉の意味
「これを経るに五事をもってす」という言葉は、孫子の最初の方の「始計篇」に出てきます。
戦争は国の存亡危機の一大事です。
ですから、孫子は戦いは慎重にしなければいけないと言っています。
むしろ、戦わずに勝つことを目指しているのが孫子です。
しかし、一旦戦えば勝たなければいけません。
そのための基本原則がここにあげられた五つです。
その五つとは、「道」「天」「地」「将」「法」のこと。
簡単に言えば、
「道」とは「挙国一致の目標」
「天」とは「天候、季節、タイミング」
「地」とは「地理的条件」
「将」とは「将兵の資質や訓練度」
「法」とは「軍隊の編成、規律、装備」
のことです。
孫子はこの五つ全部の条件が整っていなければ戦争を始めてはいけないと言っています。
◆経営に活かす
そして、この言葉はそのまま経営に置き換えることができます。
つまり、
「道」は「経営理念」や「経営方針」を明確にすること。
「天」は「時流」に適応すること。
「地」は「地域」の特性や条件をよく知ること。
「将」は「経営者や幹部」の能力が優れていること。
「法」は「組織・戦略」の力を高めること。
ということになるでしょう。
「道」を最初に持ってきたのが重要なポイントです。
経営がうまく行くには、まずは「経営理念」をしっかりと組織に浸透させなければなりません。
次に大事なのは、「天」や「地」を知るというマーケティング力。
経営者や組織の重要性はその次に位置しています。
まさに、経営の本質をついていると言っていいでしょう。
編集後記
今回の言葉に続いて
「これを校(くら)ぶるに計を以てして、其の情を索(もと)む」とあります。
経営計画とSWOT分析が必要だということでしょうか。
さすがです。
また、孫子の言葉の中で最も有名なのは、
「彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず」だと思います。
戦いだけでなく、人生の書として読まれる方も多いことでしょう。