知の難(かた)きに非(あら)ず、知に処するは則(すなわ)ち難し(韓非子)
2021//配信
「中国古典から学ぶ経営 No.23」
今回は「韓非子」からの言葉です。
知の難(かた)きに非(あら)ず、知に処するは則(すなわ)ち難し(韓非子)
◆ 韓非子(かんぴし)とは
「韓非子」は、中国戦国時代の政治家「韓非」による思想書です。
「史記」が伝えるところによれば、韓非は弱小国、韓の公子として生まれました。
秦の宰相となった「李斯」とともに、荀子に学んだとされています。
才能豊かな韓非は、韓王にしばしば進言しますが用いられず、それを嘆きました。
そこで、自分の思想を形にして残そうとしたのが、「韓非子」です。
ところが、皮肉にもこの思想は自国の韓ではなく強国の秦によって受け入れられ、韓は秦に飲み込まれることになります。
そのとき、秦王は韓非を登用しようとしましたが、同門であった「李斯」によって事実無根の汚名を着せられ、死に追いやられたとあります。
「史記」にある韓非の記述は、なかなか生々しい人間模様です。
「韓非子」は、権力の扱い方や権力の保持について書かれた書物で、法による統治を強調しています。
ここからは、「矛盾」「逆鱗」「唯々諾々」などの言葉も生まれています。
◆ 言葉の意味
「知の難(かた)きに非(あら)ず、知に処するは則(すなわ)ち難し」の意味は
「知ることはむずかしくはない。知ったあとで、対処することがむずかしいのだ」
ということです。
「韓非子」は、分かりやすい説話を用いて、教訓を引き出しています。
この言葉のもととなる説話は、金持ちの家の塀が大雨で壊れたので、隣の家の主人が「修理をしないと泥棒に入られる」と言ったが、その晩に泥棒に入られごっそり盗まれた。
しかも、隣の家の主人に対して「犯人」の疑いをかけた、というものです。
「知に処する」ことを誤った事例だと言っています。
◆ 経営に活かす
この言葉を現代にあてはめてみますと、情報収集よりも情報管理の方がむずかしいということです。
今は、何でもネットで検索ができる時代になりました。
分からないことや知らないことがあれば、すぐに調べることができます。
また、四六時中ニュースが流れてきて、情報の洪水。
まさに「知の難きにあらず」です。
そんな時代だからこそ、一層情報をうまく扱う必要があります。
例えば、お客様の情報も、商品の情報も、上手に管理をして活かすことです。
POSデータは、それを活かしてこそ、意味があります。
今後は、AIがその役目を果たしてくれるでしょう。
また、読書やセミナーによっても、知らない情報を集めることができます。
しかし、知ったことを実行に移してこそ、意味があるというものです。
2300年前も現代も、私たちや社会に求められることは同じだったということでしょうか。
編集後記
「書経」にも、同じような言葉があります。
「知ることの難きに非ず、行うことこれ難し」
知識を得るのは難しくはない。それを実行に移すことが難しいのだ、ということです。
経営も理論を知っているだけではいけません。
理論を活かしてこその経営ですね。