九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く
2021/7/27配信
「中国古典から学ぶ経営 No.27」
今回は「書経」からの言葉です。
九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く
◆ 書経とは
No.12でも紹介しましたが、書経は中国最古の歴史書です。
堯・舜から夏・殷・周王朝までの天子や諸侯の政治上の心構えや訓戒・戦いに臨んでの檄文などが記載されています。
尚書(しょうしょ)とも呼ばれ、儒教の重要な経典である五経の一つです。
孔子が編纂したとも言われていますが、定かではありません。
また、「昭和」や「平成」といった元号は、書経の中の言葉から出ていることも付け加えておきます。
◆ 言葉の意味
「九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く」というのは、
「ずい分と成功しているように思っても、最後の詰めを怠ると失敗する」という意味です。
九仞とは3mの高さ、簣とは土を運ぶ器のことを言います。
つまり、山のように高く土を積みあげても、最後の土を積むのに失敗すると崩れてしまう、というたとえです。
その昔、周の武王が殷の紂王を滅ぼして周王朝が興ると、四方の国々が周に服しました。
そして、旅という国から珍獣が献上されて喜ぶ武王を見て、重臣の召公が、「珍奇なものに心を奪われて、政治を怠ってはならない」と諫めた逸話の中にこの言葉が出てきます。
些細なことだからといって気を緩めると、ついには大きな徳を損なうと、説いたのです。
◆ 経営に活かす
最後の詰めを誤って失敗をした例は、皆さんの周りでも見られることでしょう。
遠くは、ロッキード事件で失脚した田中角栄首相や、日産のカルロス・ゴーン氏などは、そのいい例かもしれません。
ビジネスというのは、長年築き上げてきた信用やブランドが、ちょっとしたことで一気に崩れ去ってしまう危険性をはらんでいます。
企業にしても個人にしても、成功におごることなく、細部を大切にして、一歩一歩着実に進んで行くことが大切です。
これを戒めの言葉としておきましょう。
編集後記
「書経」には、含蓄のある言葉が多く出てきます。
「面従して退いて後言あることなかれ」というのも、その一つです。
面と向かっては相手の意見に従っておきながら、かげに回って不平不満を並べたり、非難をすることをしてはいけない、ということを言っています。
人間関係の中で、私たちが犯しがちな過ちの一つですね。