他山の石、以て玉を攻(みが)くべし(詩経)
2021/9/7配信
「中国古典から学ぶ経営 No.29」
今回は「詩経」からの言葉です。
他山の石、以て玉を攻(みが)くべし(詩経)
◆ 詩経とは
詩経は、中国最古の詩集です。
儒教の経典である五経(詩・書・易・春秋・礼記)の一つになります。
そして、詩教に集められた詩は、周の初め(紀元前11世紀)から東周の初め(紀元前7世紀)のものです。
詩の作者は、農民、貴族、兵士など幅広い人々で、305篇が残っています。
それにしても、こんな太古から詩を作る文化があったことは、驚きです。
なお、詩経が日本に伝わったのは奈良時代で、中にある言葉は現在の日本でも使われているものが少なくありません。
◆ 言葉の意味
「他山の石、以て玉を攻くべし」とは、直訳すれば
「よその山から出た石ころでも、こちらの宝石をみがく材料にできる」。
つまり、「他人の誤った言動でも、自分を鍛える助けとして活用できる」ということを言っています。
言い換えれば、「人のふり見て、わがふり直せ」ということです。
残念ながら、周りにはつまらないと思われる人物もいます。
そうした人物を反面教師として、自分の成長につなげることだと、言っているのでしょう。
そして、「つまらない」と思うだけでなく、自分はどうかと反省することも大事だと言っています。
また、近ごろでは、つまらないことや誤ったことではなく、優れたところを参考にすることを「他山の石として」と、使われてもいます。
実は、これは本来の意味ではありませんが、そのように使われるケースも増えているようです。
ですから、これも正しい用法として定着するかもしれません。
◆ 経営に活かす
経営者は、常に自分を鍛えて成長する努力が求められます。
そのためには、まず立派な人物を目標にして、そのレベルに近づけるということも必要でしょう。
企業も同じです。
優秀な企業の良い点を研究して、それを参考に成長させる方法もあります。
いわゆるベストプラクティスです。
一方、業績を下げてしまった経営者や、製品検査や会計の不祥事を起こして迷惑をかけてしまった企業があります。
これが、詩教に言う「他山の石」の一例です。
この業績を下げてしまったり、不祥事を起こしてしまったりした原因を調べ、そうならないように努めなくてはなりません。
「他山の石」も利用価値がありますので、経営に活かしていきましょう。
さらに言えば、自分や自社が「他山の石」にならないよう、心していきましょう。
編集後記
孔子も、詩教の言葉をよく引用しています。
「切するがごとく、磋するがごとく、琢するがごとく、磨するがごとし」という言葉もその一つです。
これは「切磋琢磨」の出所になっている言葉ですが、玉をみがくということで
今回の「他山の石」と近いものを感じます。
もちろん、どちらの言葉も経営コンサルタントにとって、必要なものですね。