社長のリーダーシップとは何か
2021/11/30配信
「実践経営講座 No.3」
社長のリーダーシップについてのお話です。
理念とビジョンを掲げ、社員を一つにまとめ目標達成に向け、組織を導く術と力量が、社長のリーダーシップです。
思惑通りに人と組織を動かし、より機能的にリーダーシップを発揮する方法を探るのが今回のテーマです。
社長のリーダーシップとは何か
◆ リーダーシップとは統御し指揮する統率力
リーダーシップを国語辞典で引けば統率力。「統」「率」を漢和辞典で引けば、
「統」は、統(す)べて、統(す)べる。
「率」は、率(りっ)する、率(ひき)いる、
とあります。
辞典からは「全てをまとめ、規律を正し、率いる力」が統率力と言えそうです。
「統」を、社員を社長の意志のもとにまとめる「統御」、
「率」を、社員を社長の意志のままに動かす「指揮」と解釈すれば、
社長のリーダーシップとは「組織を統御し指揮する統率力」との定義が成り立ちます。
社長の意のままに戦略、計画を遂行するには、先ず、しっかりと社員を社長の意に従うよう統御し、然る後に指揮し統率する。
統御と指揮がリーダーシップの術なら、社員を整然と統御し、的確に指揮を執る力が社長のトップリーダーとしての力量と言えるかもしれません。
◆ いかに統御するのか
人は本来、誰かに統制されたり他人の意志に従うことを好みません。
しかし会社が企業活動を行うには、統率者である社長に社員を従わせる必要があります。
規律を整え、理念、ビジョンを掲げ、社員の心を掴み、社長の意志のもとに社員をまとめ上げることが統御です。
規律の
「規」は、就業規則。
「律」は、就業規則を守らせること。
就業規則には、服務規定、賃金規定、賞罰規定を明確かつ合法的に定める必要があります。
就業規則は、事業所内において法的規範である旨の最高裁の判例(秋北バス事件)もあり、入社時に就業規則を法律と同じように順守すべきことを、しっかりと教え込んでおくべきです。
規律を整えるとは、守りごと、決めごとを当たり前に順守、遂行できる状態にすることです。
1分でも遅刻すれば、皆勤手当は支給しない。規則に反すれば罰則に従い懲戒する。
成果を上げ、会社に貢献すれば、褒賞制度に基づき報いる。
社長の正すべきものは正し、一隅の成果にも目を向け、報いる姿勢こそが、真面目に職務に励む社員のやる気を引出し、社長への信頼感を高めます。
規律を整え、社長自らが真摯に理念とビジョンを語り、会社の使命を社員と一体となって共有することで、社員は納得して社長に従う気になるものです。
◆ いかに指揮するのか
指揮は、企画、状況判断、決断、指示、管理の順で執られます。
指揮命令権者である社長は、状況を把握し、行うべきことを決め、受令者である社員に指示を与えます。
指示は状況に応じ、号令、命令、訓令を使い分けます。
元々は軍隊用語ですが、軍隊も会社も組織であることに変わりありません。
号令は、具体的な任務のみ、命令は、意図と任務、訓令は社長の意図のみの指示です。
社長が率先垂範、陣頭指揮するのであれば、号令で迅速に目標を達成する。
能力のある社員には訓令で裁量を与え、手段も社員に任せて成果を出させる。
情勢や社員の能力に応じ号令、命令、訓令で指示を使い分けるのが、指揮の要点です。
指示の遂行では、社員からの報告、連絡、相談に耳を傾け、状況、推移によって、適切に指示を修正し遂行状態を管理します。
トップダウンの「号令、命令、訓令」、ボトムアップの「報告、連絡、相談」を集約し、目標達成に向け社員を動かすのが、統率者たる社長の指揮する力です。
社長の思い通りに社員が動かない、動けない、リーダーシップが効いていない。
そのような時は、規則が曖昧になっていないか、賞罰は公正だったか、指示の出しか方、報告の受け方は適切だったか等々、統御と指揮の要素を分解して検証すると、問題点とリーダーシップを高めるための改善策が、具体的に明らかになるはずです。
編集後記
理を説き、情に訴え、なだめ、諭し、時には利をちらつかせと、社員を社長の思い通りに動かすのは骨の折れることです。
人手不足の時などは、足元を見透かされ、付け込まれぬよう、やり取りに気を使い、こんなことなら社長をやるより、人に使われる方が、よほど気楽だとさえ思えてきます。
しかし危急存亡の秋には、人はこぞって強い統率者を求め、仰ぎ見ると言います。
コロナ禍の危機的状況こそ、社長がリーダーシップを発揮し、社員をまとめ上げ、危機を好機に変える良い機会かもしれません。
(文責:経営士 江口敬一)