経営研究会「トヨタ、ユニクロに学ぶ経営理念の立て方、活かし方」

・講師:江口敬一

・開催日時:2021年8月8日(日)15:00~16:30

・開催場所:ZOOMオンライン(参加者11名)

今回は、コンサルタントが中期経営計画の策定支援で重要となる「経営理念」について、講師自身の経験に基づき、事例的に解説がされました。

経営理念は企業によって「経営理念」「基本理念」「企業理念」等、呼び名は異なるものの、消費者、取引先、従業員、株主、地域などのステークホルダーに対し、企業の社会的使命、存在理由を明示すものであり、経営戦略、中期経営計画の根幹をなす概念です。

【各社の例】

・トヨタ自動車:基本理念「内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民を目指す」など全7項目。

多様なステイクホルダー、多様な領域をもれなくカバーし、トヨタの社会的使命、事業目的、存在理由が全方位的に示されている。基本理念とは別に、ビジョンを底辺に豊田綱領を頂点にしたトヨタフィロソフィーも掲げられていま。

・ファーストリテイリング(ユニクロ):FAST RETAILING WAY 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」とステートメント1行で理念が語られ、ミッション、バリュー、プリンシプルの項目で方向性、志向する価値観、行動規範などが説明されています。

経営理念については何人かの経営者に聞いても、「原点」「拠りどころ」「永遠に追い求める理想」「きれいごと」「理念がないことが理念」等、捉え方は様々です。中長期の経営計画の遂行にあたっては、経営者が自ら経営理念を定義し、事あるごとに語り、ビジョン、ドメイン、事業戦略はもとよりアクションプラン、行動規範に至るまで、経営理念を浸透させることが、経営目標を達成するための重大事項となります。理念浸透のため環境整備の支援は、経営コンサルタントの大切な役割でもあります。理念の浸透とは、経営者であれ社員であれ、その事業、その企画、その行為は、経営理念に則しているのかを無意識に自身に問い、理念が行動に反映されている状態です。CSR経営をみても、経営理念→行動規範→ガバナンス→コンプライアンス→基本的CSR→戦略的CSRと積み上げられ企業価値が最大化されるのであって、経営理念が最低限の行動規範として企業風土に定着していない限り環境経営、CSR経営は成り立たちません。中期経営計画の初めの一歩は、普遍的かつ平易で分かりやすく経営理念を明文化することです。ユニクロのような1行理念の方が、経営理念を速やかに浸透でき、ビジョンも明確に描けます。

経営コンサルタントを行う上では、対象企業の「経営理念」を確認・理解し、中期経営計画を始めとする各種計画・施策に十分織り込んでいくよう働きかけることを忘れないようにしましょう。