日本経営士会中部支部

2022-01-25

持続的経営のための戦略的CSR

2022/1/25配信


「実践経営講座 No.6」

環境経営と企業価値を高める戦略的CSRについての話です。


持続的経営のための戦略的CSR

◆ 環境経営とは何か

環境経営とかCSR経営、SDGs経営といった言葉をよく耳にします。

先日、参加した環境経営に関する講座の内容です。

「環境配慮、社会貢献、法令順守が出来ていないと消費者や社会に受入れられず、事業の継続が困難になる。」

「しかし環境や社会貢献に配慮する企業は、社会にとって共通の価値を生み出す市民企業として持続的な成長が可能となる。」

「CSRやSDGsへの取組みは、今や企業経営の必須事項、だから環境経営なのである。」

講座の9割以上は、SDGsの17のゴールと169のターゲットの解説で、経営に関しては、だからSDGsの推進やCSR活動に積極的に取組みましょうの一言だけでした。

環境経営の定義はともかく、講座では語られなかった、企業価値向上にSDGsやCSRをどう結びつけるかが、経営課題であることは改めて認識しました。

◆ CSRは企業統治から

CSRで企業価値を高める前提は、企業統治です。

CSRの基盤は、法令順守(コンプライアンス)を徹底させる、企業統治(ガバナンス)です。

法令順守意識が低いままCSR活動を行っても、到底、企業価値の向上には繋がりません。

CSRの目的は企業価値の向上であり、CSRの前提は企業統治です。


CSRで企業価値を高めるプロセスは、次の順です。

企業統治
  ↓
法令順守
  ↓
基本的CSR
  ↓
戦略的CSR
  ↓
企業価値向上


基本的CSRは、ペーパレスや省エネ、地域事業への参画など、企業として最低限の社会貢献活動です。

戦略的CSRとは、社会課題の解決に自社の事業を連携させ、利益の最大化やブランディングなど、企業価値向上を目的にした戦略的な社会貢献活動です。

◆ 戦略的CSRとCSRブランディング

戦略的CSRは、社会課題を横軸に、市場を縦軸にして自社ならではの強みを生かせる立ち位置を探る戦略です。

脱炭素 × 排出権取引市場 = CO2オフセットプロバイダー + 自社の強み

高齢化 × 住宅市場 = バリアフリー住宅 + 自社の強み

社会課題と市場をより細分化することで、強みを生かせる顧客と製品・サービスがより明確となります。


CSRブランディングとは、社会に役立つ〇〇といえば〇〇、といった具合に単純化すると分かりやすいかもしれません。

飲食業であればLOHAS志向を細分化し、有機栽培野菜に特化したレストランで、畑と体によい、有機トマト料理といえば「〇〇レストラン」とか。

戦略的CSRでは、従来の顧客の視点である品質、機能、価格、納期に社会性とCSRブランディングの視点が加わります。


環境経営とは、自社の事業と社会性の統合を軸にしたビジョン、ドメイン、経営計画を基に、事業の持続を目指す経営だと考えます。

また、CSR、SDGsを手立てとして、経営の基盤である企業統治のあり方を見直すのも、環境経営の一環かもしれません。


いずれにせよ企業の最大、あるいは最小の社会貢献は、利益を上げ法人税を納めることです。

企業にとって環境とかCSR、SDGsは、あくまで企業価値を高めるための手段です。

決して目的ではないことをしっかりと心に留めておきたいものです。

編集後記

ゴールだけでプロセスがない。

あるべき姿だけで手立てがない。

環境経営、CSR経営、SDGs経営といった〇〇経営には、よくありがちです。

理念さえしっかり掲げていれば、やがて道が開ける理念経営とか。

コロナ禍で中小企業も厳冬期を向かえています。

苦しくとも惑わされることなく、現実をしっかりと見据え、知恵を出し合っていきたいものです。

自戒を込めて。


(文責:経営士 江口敬一)

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