日本経営士会中部支部

2022-09-13

立派な方針があるのに、なぜ経営がうまく行かないのか

2022/9/13配信


「儲かる会社になるヒント No.17」

テーマは「 立派な方針があるのに、なぜ経営がうまく行かないのか 」です。


言うことが立派な経営者がいます。

どこかで学んだ経営理論を引き合いに、得意げです。

それを基に会社経営をしますが、なかなか成果につながりません。

そんな会社の話です。


立派な方針があるのに、なぜ経営がうまく行かないのか

◆ 経営者の悩み

先日、経営者はどうあるべきか、ということに悩んでいる方に出会いました。

どうも、最近の業績が芳しくないようです。その原因について聞いてみました。

経営者は、いろいろと原因を並べます。

「人口が減ってきている」

「毎日やることが多すぎて、じっくりと戦略を練る時間がない」

「競合会社が増えてきて、価格競争におちいっている」

「ぱっとした新製品が出てこない」

「以前に比べて広告宣伝の効果が薄くなっている」

「取引先企業が協力的でなくなっている」

「在庫コントロールが難しくなっている」

大変ですねえ。しかし、これらは本質的な原因ではないような気がします。

◆ 経営者への質問

そこで、次のように尋ねました。

「会社の目指しているところは、どんなことですか?」

経営者からは、明確な返事が返ってきました。

「会社にたずさわる人たちが幸せになることです」

なるほど、悪くありません。続いての質問です。

「そのために、社員の人たちにどんな心構えを持っていただいていますか?」

これも、即座に返事が返ってくるではありませんか。

「わが社の行動指針は

 (1)お客様に感動を届ける、

 (2)自分の強みを活かしつつ楽しんで仕事をする、

 (3)自分で考えて行動する、

 ということです」

すごいですね。しっかりとした考えを持った経営者だと分かります。

しかし、こんな立派な方針があるのに、会社の業績がよくありません。不思議です。

◆ 社員への質問

そこで、主だった社員の方何人かに集まってもらい、

30分ほど話を聞かせていただきました。

そして、「仕事は楽しいですか?」と尋ねますと、皆さん顔を見合わせています。

私は、てっきり「はい!」という声が聞こえるとばかり思っていました。

楽しんで仕事をすることを方針にしているからです。

しかし、皆さんの表情からすると、どうも仕事を心から楽しめてはいないようです。

また、こんなことも聞きました。

「この会社は、何を目指していると思いますか?」

ここでも皆さん「??」という表情をしています。

そして、「会社の行動指針をご存知ですか?」と尋ねますと、

「聞いたことがあるようなないような」という返事でした。

うーん、これは問題です。

まったく会社の方向性が社員の皆さんに伝わっていません。

◆ 業績が振るわない原因

どうしてそんなことになってしまっているのでしょうか。

理由は簡単です。経営者が社員にしっかりと伝えていないからです。

いえ、伝えているのかもしれませんが、「伝わって」いません。

これが、この会社の業績が振るわない原因のような気がします。

問題は、社員を同じ方向に向かせるという、経営者のリーダーシップです。

本気で「会社にたずさわる人たちが幸せになる」ことが目標ならば、

そのことを毎日でも言い続けなくてはいけません。

そのための行動指針も言い続けなくてはいけません。

社員の一つ一つの行動がその指針に沿っているかどうか、確認します。

それが、この経営者の発揮すべきリーダーシップです。

そうすれば、業績は回復していくでしょう。

編集後記

得てして、勉強家で理論家の経営者にありがちなことです。

自分は分かっているから、他の人も分かっているに違いない。

そして、1回言えば伝わると思っています。

幸い、この会社は、その後見事に業績が回復しました。

今では、経営者と社員が膝を突き合わせて話す姿が頻繁です。


(文責:経営士 梅本泰則)

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