日本経営士会中部支部

2023-11-21

企業の雇用維持とウェルビーイング

2023/11/21配信


「続・コンサルの現場 No.38」

最近、労働力不足の問題があり、一般企業の離職率は3年以内に30%を超えているといわれています。

人が離職することは、企業にとって何らかの原因があるかと思うのです。

その原因と解決策を考えます。


企業の雇用維持とウェルビーイング

◆ 離職率の高い理由

 希望をもって入社した人が、企業を3年以内に退職してしまうのは何故でしょうか。
 過去は、企業が人を選び採用していました。
 しかし、現在は、就職希望者が企業を選ぶ時代と感じるのです。

 各企業は、HPなどで採用条件や企業PR発信していますから、就職希望者は自分の求めている企業を選ぶことが簡単にできてしまうのです。
 とくにZ世代といわれる人達は、生まれた時からスマホがあり、SNSで個人PRが簡単にできる時代にあり、希望就職先を自分で探し見つけています。

 さらに、就職したものの、居心地の悪い企業に何時までもいる必要がなく、自分を発揮できる場所が他にないかと潜在的に思っているのです。
 また、企業の方も以前と違い、転職が多い人材の方が、むしろ経験豊富でよいとの見方もあるようです。

◆ 企業の雇用維持のウェルビーイングとは

 企業は、自社に入ってくれたからには当然、貢献して欲しいと思います。
 しかし、そこに従業員満足度が少ないと、ある日突然、退職届がでてしまうのです。

 このようにならないために最近では、ウェルビーイング(Well-being)という概念が企業に求められています。
 Well-beingを直訳すると「良い状態にする」意味です。

 働き手は、心身ともに健康でいられ、社会的にも満足できることを求めています。
 つまり、企業は従業員に対し、ウェルビーイングを重視した職場環境や制度づくりをしなければならなくなっているのです。

◆ 教育できる体制と活躍できる仕事をつくる

 新入社員は、新しいことへの挑戦として、早く先輩に追いつこうと勉強します。
 しかし会社側にその勉強ができる体制ができていないと、その新入社員は毎日の作業に追われ、勉強ができず、向上意欲が徐々に失われていくのです。

 また、自分の思う改善提案があっても、上司より、それは以前試したから効果がないとか、費用がかかるから採用できないなどと、検討もされず言われてしまうことがあります。
 こうなると新入社員は、提案意欲がなくなっていくのです。
 そして会社へ出勤しても、活躍する場所がないと感じ、テンションが下がり退職への道となってしまいます。

 ですから、従業員には勉強できる時間を与え、提案が出た際は充分に検討しそれについての意見交換することが必要なのです。
 従業員に勉強させることは、企業側にとっては社員教育なのですから、スケジュール化し、従業員がステップアップできる仕組みが必要となります。
 そこで、教育と活躍の場を提供するため、改善発表会を定期的に実施し、離職率を下げる取組みをしている企業があります。
 ここにそのS社改善発表会の例を紹介します。

◆ S社の改善発表会

 S社は、自動車部品製造業で従業員数は38名です。
 毎年1回、部署毎に改善テーマ発表会を開催し、社長と部長で点数評価し表彰しています。
 その際、部署名で発表するのではなくユニークな名前、「だめおし太郎」「カイゼンスーパーマン」「憧れてください」「蛙化現象」・・・などのネーミングを付け、楽しみながら実施しているのです。

 従業員にとって年1回、自分のチームが表彰されるかどうかとなるため、チーム全員で張り切って取組みます。
 グループ毎に立案・計画・資料作成などを分担し、作成しなければなりません。
 これが、従業員の仕事につながっているのです。
 また、これにより従業員同士のコミュニケーションやモチベーションアップにもなっています。

編集後記

 ある経営者より、一人採用するには150万円ほどかかるとお聞きしました。
 採用した3年後に退職されたならば、その経費はもったいないことです。
 若い人の考えが時代とともに変わってきています。
 この費用にてウェルビーイングを構築すれば、離職率がゼロにできる可能性があると思うのです。

 (文責:経営士 三品富義)

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