日本経営士会中部支部

2023-11-28

腹に落ちる瞬間

2023/11/28配信


「儲かる会社になるヒント No.38」

テーマは「腹に落ちる瞬間」です。

世間は、やる気のある経営者ばかりではありません。
なかなかやる気の見えない経営者もいます。

やる気のない経営者では、会社は儲かりません。
どうしたらやる気になってもらえるでしょうか。

そんなことを考えてみます。


腹に落ちる瞬間

◆ ないないづくしの経営者

コンサルティングをしていますと、その方たちに、ある瞬間が訪れることがよくあります。
どんな瞬間でしょうか。

そこで、二つの中小企業の例を紹介します。まず、あまり良くない例からです。

ある会合で、中小企業の経営者と同じ席になりました。
世間話に続いて、ついついビジネスの話になります。

「こんな販促イベントをしてはいかがですか?」と提案しますと、
「そんなことは、今までやったことがないよ!」との返事。

今までやったことがないから、これからもやる気がない、という意味です。

そして、「こうすれば、会社の売上が伸びますよ」とヒントを差し上げました。
すると、かの経営者は「これ以上売上を伸ばす気はないよ」とのこと。

家族が生活出来ればそれでいい、というわけです。
びっくりして、お節介ついでにたずねてしまいました。

「将来、どんなお店になりたいのですか?」
経営者の返事はこうでした。「そんなことは考えたこともないよ!」
またまたびっくり。

それにしても「ないないづくし」です。
こうなると、なかなか「ある瞬間」は訪れません。

◆ 売上が伸びた

一方、こんな会社があります。
知人の紹介でコンサルティングをすることになりました。

最初のころは、先方もおっかなびっくりです。
どんなコンサルティングをされるかと、不安だったのでしょう。

お話をすると、課題がいくつか見えてきました。
案の定、売上が思うように伸びていません。

売上を、すぐに回復させる方法があります。
一番手っ取り早いのが、売上の好調な商品を、さらに売ることです。

もしくは、お店が売りたい商品に絞り込むことです。
ですから、このお店もそうしました。

しかし、これはいわゆる対症療法で、本当の解決策はまだ先のことです。

そこで、次にSNSでお客様と仲良くなる方法を提案しました。
当初、店主はけげんな顔をしていましたが、素直に提案を受け入れてくれます。

その戦法を続けるうちに、成果が出始めました。
その結果、どうも経営者は「腹に落ちた」ようです。

ビジネスの主役は、商品だけではなくお客様もだ、ということが。

◆ 素直な姿勢

そう、これが「腹に落ちた瞬間」なのです。
その後、経営者は提案をどんどんと取り入れるようになりました。

もちろん、「何のためにこの商売をしているのか」、
「将来はどんなお店になりたいのか」という本質的な問題も、
しっかりと考えられるようになりました。

おかげで、ビジネスは順調です。

このように、素直な姿勢を持つと、腹に落ちる瞬間が来ます。

最初のうちは、「そんなことは言われなくても分かっているよ」
「経営をしたことのないコンサルタントに何が分かるのか」と、
心の奥では反発をしています。

とはいえ、以前からこの経営者は「何かを変えたい」と思っていたはずです。
ですから、提案されたことを実行していくことで、「腹に落ちる」瞬間がやってきました。

もちろん、腹に落ちる時期は人それぞれです。
しかし、腹に落ちた瞬間から急速に伸びるのは、どの会社も同じです。

儲かる会社になるには、「素直さ」が必要ですね。

編集後記

成長する経営者に共通する要素が、三つあると言われます。

一つは今回の「素直さ」。
後の二つは、「勉強好きであること」と「物事を前向きにとらえる態度」です。

どれも簡単なことではありません。中でも「素直」であることは難しいです。

ですから、なかなか素直な経営者に出会うことはありません。
もっとも、それはコンサルタントの力量にもよるものでしょうが・・・。


(文責:経営士 梅本泰則)

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