日本経営士会中部支部

2020-07-21

店長・幹部への社員研修

2020/7/21配信


「コンサルの現場 No.10」

さて、コンサルタントが独立をしたとき誰もが経験するのが最初の仕事です。

すぐに仕事の依頼が来る人もいれば、なかなかお客様をつかむことが出来ないコンサルタントもいます。

今回は、経営士のA氏が独立をしたときの話です。


店長・幹部への社員研修

◆ 仕事の紹介

A氏が経営コンサルタントとして開業をしたばかりのときは、さすがに仕事がありません。

ネット経由でコンサルの依頼をいただいた小さな企業が唯一のお客さまでした。

そんな現状を見かねてか、A氏のコンサル業立ち上げを後押ししてくれた先輩コンサルタントの先生から、仕事の紹介がありました。

「T社さんから社員研修の依頼があるのですが、私の代わりに出来ますか?」

T社は有名なチェーンストアです。

A氏は一瞬躊躇しましたが、何の研修かも聞かずに、思わず「出来ます!」と答えてしまいました。

◆ チャンス

聞いてみると「接客」の研修でした。

A氏は、これには困りました。

接客の経験が無いわけではありませんが、素人に近いです。

しかも、研修というものをしたことがありませんから、どんなふうに進めていったらいいか分かりません。

しかし、A氏にとってはチャンスです。


覚悟を決めました。

それから研修当日までの2ヶ月間、懸命の努力が始まります。

まずは接客に関する本を10冊買い込んで、猛勉強。

話す内容を整理していきます。

パワーポイントで研修用スライドを仕上げ、何度も何度もリハーサル。

研修ですから「ワーク」が必要だろうと思い、ワーク内容を考えこれもリハーサル。

配布資料やツールも作り込み、準備万端です。

◆ A氏の宝

いよいよT社に訪問する日が来ました。

研修会場についてみると、幹部はじめ40名ほどの店長が集まっています。

それを見てA氏はドキドキ、緊張が襲ってきます。

それでも、ベテラン講師のように振舞おうと、話を始めました。

その後はもう必死です。

3時間の持ち時間をやっとのことで終えます。

「ふ~っ、終わった・・」

何とかうまく行きました。

しかし、喉はからから、背中は汗でびっしょりです。

ですから、A氏はこの日のことは、今でも忘れられません。


この日がA氏のコンサルタント業の本当の始まりです。

今や経験を積んだA氏からすれば実に下手な研修でしたが、それでも皆さん熱心に受講してくれました。

しかも、数日後にはT社の経営者から心のこもった手書きのお礼状が届いたのです。

良かった!

頑張った甲斐がありました。

その手紙はA氏の大切な宝となっています。

編集後記

今回のA氏の場合はうまくいったようですが、必ずしも最初の仕事がうまく行くとは限りません。

経営コンサルタントは成功事例ばかりではないのです。

それどころか、失敗を重ねながら日々成長していきます。

成功事例も失敗事例も、コンサルタントにとってはすべてが糧です。

重要なことは、いつの場合も全力をかたむけることですね。

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