日本経営士会中部支部

2021-05-11

シニア起業家からの相談

2021/5/11配信


「コンサルの現場 No.24」

高齢化が進んでいますが、シニアの方の活躍も求められています。

ですから、シニアの方からのご相談もやってきます。

今回は、そんな事例です。


シニア起業家からの相談

◆ コンサルタントになりたい

60代後半の方が相談に来られました。

「30年間勤めた会社でつかんだ節税ノウハウを、コンサルタントになって多くの中小企業に伝え、相手の役に立ちたい」とのことでした。

そこで、お尋ねしました。

コンサル

どんな方をお客様にしたいですか?

相談者

中小企業の経営者です

コンサル

そのお客様は、どこにいますか?

相談者

日本全国にいますよ

コンサル

どうやってそのお客様をつかまえるのですか?

相談者

それが分からないから相談に来たのです

コンサル

なるほど。

コンサル

それでは、その販売戦略を聞かせてください

相談者

販売戦略? 何ですかそれは?

コンサル

どんな商品を、どんな方法で、いつまでに、どれくらい販売するか、という計画のことです

相談者

そんなものはありません。私のノウハウは素晴らしいものなのだから、説明する機会さえあれば、皆が導入してくれるに決まっています

コンサル

少し不安になりました。

コンサル

では、事業や商品を説明するためのホームページはお持ちですか?

相談者

ありません

コンサル

ブログとかメールマガジンとか、見込み客にアクセスする方法はありますか?

相談者

パソコンは苦手ですから、まったくありません

コンサル

ちょっと困りましたね。

◆ 販売戦略書

仕方なく、そのまま話を続けます。

コンサル

では、まず販売戦略書を作りませんか?

相談者

販売戦略書? どうやって作るのですか?

コンサル

まずは、誰をお客様にするかを決めることから始めます

相談者

誰って? さっきも言ったように中小企業の経営者です

コンサル

それでは漠然としていますので、もっと絞ってください。会社の規模とか、業種とか、エリアとか

相談者

どうしてそんな面倒くさいことをするのだ?

という表情です。

コンサル

かまわず話を続けます。

コンサル

次は、あなたが提供する商品の強みを見つけていきます。 強みは何でしょう?

相談者

強みは、この節税ノウハウを使えば利益が出るということですかね

コンサル

そのノウハウを相手にわかりやすく説明することはできますか?

相談者

公開はできませんが、興味のある方には口頭で説明できます


といって、持参した説明用ファイルを見せてくれます。

コンサル

これをチラシにしたり、ホームページなどに載せられますか?

相談者

そんなことをしたら、私のノウハウがばれてしまう

コンサル

うーん、どうやって商品の良さを伝えるつもりなのでしょう。

コンサル

手始めにブログを書いてみてはいかがでしょう? メールマガジンを発行するという方法も考えられますが?

相談者

パソコンは苦手だと言ったはずです!


叱られてしまいました。

相談者

ホームページを作るのには金がかかる。しかも、計画を作ったところで計画通りにいくものではない。その上、ブログやメルマガを書くことは、私には無理だ


出来ない理由が、いくつも出てきます。

販売戦略を考えることも、計画書を作ることも面倒なようです。

◆ 結論を出す

最後の提案をしました。

コンサル

中小企業の経営者を集めてセミナーを開かれてはいかがでしょう

相談者

どうやってセミナーに呼べばいいのか?

コンサル

ネットを使わないのであれば、DMを送ることですね

相談者

送り先はどうやって探すのか?



そろそろ結論を出すときです。

この相談者のコンサルティングを引き受けないことにしました。

どうして今回のコンサルティングを断ったのでしょうか。


理由は3つあります。

それは、今回の相談者が

  • 話をすなおに聞かない
  • 出来ない理由を並べ立てる
  • プライドと自信があり過ぎる

からです。


ビジネス誌に、成功するシニア起業者と失敗するシニア起業者の特徴が紹介してありました。

それによれば、「プライドが高く謙虚さにかける人は失敗しやすい」とあります。

今回の相談者の成功を祈るばかりです。

編集後記

失敗するシニアの条件を、あと2つ紹介しておきます。

・過去の地位や人脈にこだわる

・能力が陳腐化し、自信が空回りする

私も、よくよく心しないといけませんね。

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