日本経営士会中部支部

2021-06-01

腹に落ちる

2021/6/1配信


「コンサルの現場 No.25」

コンサルティングをしていますと、いろいろな人に出会います。

最初から話を聞いてくれる方、はすに構える方、調子の良い方、品定めをする方。

そして、その方たちに、ある瞬間が訪れます。

はたして、どんな瞬間でしょうか。


腹に落ちる

◆ 会合で出会った経営者

人は、腹に落ちる瞬間、というものがあります。

話をしているときもそうです。

本を読んでいるときにもあります。

実は、こうした経験は、コンサルの現場でも起こります。

まず、あまり良くない例からです。


「こんな店内イベントをしてはいかがですか?」と提案しますと、「そんなことは今までやったことがないよ!」との返事。

今までやったことがないから、これからもやる気がない、という意味です。


私はびっくりして、お節介ついでにたずねてしまいました。

「将来、どんなお店になりたいのですか?」

経営者の返事はこうでした。

「そんなことは考えたこともないよ!」

またまたびっくりです。

こういうお店もあるのだなあ、と思い知らされました。


それにしても「ないないづくし」です。

これでは、「腹に落ちる瞬間」は、やってきません。

◆ 腹に落ちたお店

一方、こんなお店があります。


ある方の紹介でコンサルティングをすることになりました。

最初のころは、先方もおっかなびっくりです。

どんなコンサルティングをされるかと、不安だったのでしょう。


お話をすると、課題がいくつか見えてきました。

案の定、売上が思うように伸びていません。

売上を、すぐに回復させる方法があります。

一番手っ取り早いのが、お店で好調な商品を、さらに売ることです。

もしくは、お店が売りたい商品に絞り込むことです。


ですから、このお店もそうしました。

ところが、これはいわゆる対症療法です。

本当の解決策にはなりません。

そこで、私はブログでお客様と仲良くなる方法を提案しました。

当初、店主はけげんな顔をしていましたが、素直に提案を受け入れてくれたのです。


その戦法を続けるうちに、成果が出始めました。

その結果、どうも店主は「腹に落ちた」ようです。

商売の主役は商品だけではなく、お客様もそうだということが。

◆ その後

その後、店主は私の提案を、どんどんと取り入れるようになりました。

もちろん、「何のためにこの商売をしているのか」「将来はどんなお店になりたいのか」という本質的な問題も、考えられるようになりました。

おかげで、商売は順調です。

このように、素直に意見を聞くと、腹に落ちる瞬間が来ます。

最初のうちは、「そんなことは言われなくても分かっているよ」「商売をしたことのないコンサルタントに何が分かるのか」と、心の奥では反発をしています。

ところが、コンサルティングを受けようと思った時点で、「何かを変えたい」と思ったはずです。

ですから、無理やりにでも提案されたことを実行していきます。

すると「腹に落ちる」瞬間がやってきます。


腹に落ちる時期は、人それぞれです。

しかし、腹に落ちた瞬間から急速に伸びるのは、どのお店も同じです。

編集後記

残念ながら、中には最後まで腹に落ちなかったお客様もあります。

腹に落ちたように見せかけていた方もいました。

どちらも、私の責任です。

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