人という資源を活かす経営
2023/4/25配信
「続・コンサルの現場 No.28」
企業や組織にとって、人の資源を活かす経営についてのお話です。
人という資源を活かす経営
◆ 人的資本の考え方
最近、企業経営改革として、人的資本という考え方が言われるようになってきています。
人的資本という考え方が確立する以前は、人間は単なる機械の一部とみなされ、生産性や効率性の向上のために、人件費を抑えることが重要だったのです。
しかし人々は、スキル、知識、能力、健康、そして社会的つながりなど、個人のもつ資源を労働力として提供、貢献したいという願望が、強くなってきています。
一方、企業や組織では、これらの人々の願望を労働力に活かせば、生産性や経済成長に大きく影響することが明らかとなってきており、人的資本の概念が登場したのです。
人的資本の考え方は、アメリカの経済学者セオドア・シュルツ氏やゲーリー・ベッカー氏などによって提唱され、経済学や社会学などで研究され、ビジネスの戦略策定にも応用されるようになりました。
◆ 五方良し
また、日本で唱えられている「三方良し」では、企業や組織の運営について、それに携わる
①社員とその家族、②取引先とその家族、③顧客の三方が良くなり、発展していかねばならないとあります。
ところが、このところ、
④地域住民、⑤株主を加えた「五方良し」が唱えられるようになってきています。
つまり、いくら業績が良くても、それは一時的なものであり、ステークホルダーが大切にされ、幸せにならなければ、持続可能な企業や組織になって行きません。
◆ 「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
そこで、企業や組織に関わる人、すべての幸せを実現したいとのことで「人を大切にする経営学会」の坂本光司会長が委員長となり、「人を幸せにする経営」を唱えています。
そして、当会では、「日本でいちばん大切にしたい会社」の表彰制度を広めておられます。
表彰されるには、企業や組織が自ら応募する必要がありますが、過去5年以上にわたって、以下6項目の全てに該当していることが条件となります。
- 希望退職者の募集や人員整理(リストラ)をしていない
- 重大(死亡や重傷)な労働災害を発生させていない
- 一方的なコストダウン等理不尽な取引きを強要していない
- 障がい者の雇用率は法定雇用率以上である
- 営業黒字で納税責任を果たしている
- 下請代金支払遅延等防止法等の法令違反がない
この大賞は、2010年度より年1回の募集をしており、第13回となる昨年は、26の企業や組織が表彰されています。
この大賞のコンセプトは「業績が先であっては社員を不幸にするのです。人を大切にする経営をすれば業績はあとからついてきます。これは厳然たる事実です」というものです。
◆ まとめ
皆様の企業や組織の運営について、人的資本、五方良し、大切にしたい会社を目指してみれば、サスティナブル経営に結び付くかと思います。
これからは、業績を一番とするのではなく、人を大切にする経営が、重要となるのです。
編集後記
企業や組織が人を大切にする風土は、結局、経営者自身が変わろうとする謙虚な姿勢がなければ変わらないと思います。
筆者がよく言っているように、何でも意見が出せる企業や組織風土にするには、人的資本を活かすことが必要なのです。
(文責:経営士 三品富義)