サステナビリティ経営をしていくには
2023/10/31配信
「続・コンサルの現場 No.37」
企業は、世のためにも、働いている従業員のためにも、サステナビリティと言われる持続可能な経営をしていかねばなりません。
そのために経営者は、どう対応していかねばならないのでしょうか。
サステナビリティ経営をしていくには
◆ N社が廃業に至った経緯
N社は今から約60年前に、カラー写真(フィルム式)の現像所を創業いたしました。
モノクロ写真からカラー写真に切り替わり、急速に業績が伸びた昭和時代です。
写真需要はどんどん増え、残業の日々が続き、終電時間を過ぎ、タクシーで帰宅することが多くありました。
業績ピーク時は、150名の従業員でした。
当時、給与は従業員がびっくりするほど年々増加していきました。
しかしながらそこに、デジタル写真が登場してきたのです。
当初のデジタル写真は、フィルム式写真に比べれば粗い画像でした。
ですから、N社は、あらためてフィルム式のアナログの良さを認め、市場に対してフィルムによる画像に優位性があるとみていました。
言い換えればデジタル写真を馬鹿にし、フィルム写真に対する驕りがあったのです。
しかしながらデジタル写真は、どんどん画質が良くなっていきそれと共に市場シェアも増えていきました。
その間、N社はデジタル写真の普及に対し何とかせねばと思いつつ、社長も部長もその対策や改革がまったくできなかったのです。
従業員も経営者に対して何も言わず、なすがままとなっていました。
その様な状況で、ずるずると業績が悪くなっていき、リストラにより従業員が退職していったのです。
そしてある日、ホテルに幹部を集め、社長より半年後に廃業するとの説明がありました。
ついに創業から40年、デジタル写真需要が増え、N社はここまでと思い、廃業してしまったのです。
廃業に至るまで、何故、N社は変革できなかったのか。
◆ N社が廃業になった原因
N社の事業計画は、数値目標しかなく、各部署の営業がその数値達成のためにとくに提案も戦略もなく、頑張っていたにすぎません。
経営者の幹部会議では、その数値目標未達成の原因を追求するのみで、会社全体で業界の分析や提案を出し合うことができなかったのです。
それでも、一部の若い従業員から、これからはデジタル写真の導入をしていくべきだと提案をしていましたが、いつの間にか消滅してしまいました。
N社は、成長期における自社の成功を過信し、環境の変化を予見するための戦略の見直しを怠りました。
経営者としては、常に変革と改革の心を持つことが重要です。
◆ 100年に一度の変革
写真がデジタルに変わったように、音楽のレコードも、ポケベルも衰退しました。
今度は、自動車業界の変革が始まっています。
ガソリン関係の部品は、大幅に減少するかもしれません。
車体ボディも一体成型に変わっていくようです。
N社のように変革の提案がなければ、いずれ淘汰されてしまいます。
サステナビリティな経営が盛んに言われている昨今、世の中や業界の動きを俯瞰し会社が一丸となって提案を出し合い、変革をしていくべきです。
◆ しかしながら提案がでてこない理由
そうは言っても、企業を訪問した際、経営者の悩みとして従業員から何も提案がないので困っていると聞きます。
A社では、提案箱を設置していながら、年間に集まるのは2~3通です。
また、B社は、各従業員に毎月1通以上の提案を要望しています。
それでもなかなか提案がでてこないのです。
このような企業であればN社のようになってしまうかもしれません。
これを解決するには、どうしたらよいでしょうか。
経営者は、従業員に業界のことや経営に関する勉強の機会を与え、生き残るためのさまざまな提案をさせることです。
ここで気を付けなければならないのは、突拍子もない提案でも、可能性があると思われる提案はすべて真剣に検討し、その可否を判断することが重要と思います。
提案者からその提案理由を詳細に聴きだし、誠意を持って対応することです。
従業員からしてみると、提案が却下されるとがっかりしてしまいます。
それが何回も続くと、もう提案しなくなってしまうのです。
編集後記
業績の調子のよい時は、よく周りがみえなくなるものです。
しかし、こういう時ほど、社内一丸となって先を読んで変革していくことが必要となります。
更に、世の動きを俯瞰的かつ冷静に意見が言え、アドバイスができるコンサルタントの導入をお勧めしたく思うのです。
日本経営士会は、そのようなご相談に力を注いでいます。
(文責:経営士 三品富義)