兵は凶器なり、争いは逆徳なり(尉繚子)
2020/6/23配信
「中国古典から学ぶ経営 No.8」
今回は「尉繚子(うつりょうし)」からの言葉です。
兵は凶器なり、争いは逆徳なり(尉繚子)
◆ 尉繚子(うつりょうし)
「尉繚子」を知らない方も多いのではないでしょうか。
「孫子」などと共に、中国の武経(ぶけい)七書の一つです。
いわゆる兵法書になります。
「尉繚」は秦の始皇帝に仕えた名将で、その「尉繚」が書いたのが「尉繚子」です。
◆ 言葉の意味
「武器は凶器である。そして戦争は徳に反した行為だから、行ってはならない」と言っています。
兵法書に「戦争を行ってはならない」と書くのですから、すごいですね。
殺戮の横行した戦国時代に著されたからこそ、心に迫るものがあります。
「武器は、所詮人殺しのための凶器になってしまう」のです。
紛争の解決は政治や外交によって行われるべきで、武器による解決は最低の策だと、「尉繚」は言っているのでしょう。
戦争で幾多の悲惨な現場を体験した武将ならではの言葉です。
ですから、孫子も同じように言っています。
「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」。
そればかりか、「尉繚」は、どんな理由があろうと「戦い」は徳に反した行為なのでしてはいけないと言っています。
そうですね。
戦いは、世の中を乱します。
罪のない人々を苦しめます。
それなのに、まだ「戦い」を求める国があります。
中東では今なお戦争が続いているではありませんか。
そして、北朝鮮はともかく、アメリカと中国は貿易と通信を武器に「戦い」を仕掛けています。
それも、「徳に反した争い」に向かおうとしているのです。
リーダーの言動からは、徳のかけらさえ感じることはできません。
日本とても、じわじわと「戦い」のための武力を貯め込んでいるようです。
「戦い」は人々を不幸にします。
米中は、そのことが分かっていて「戦い」を仕掛けているのでしょうか。
「尉繚子」の本家である中国には、なおさら今回の言葉をかみしめて欲しいものです。
◆ 経営に活かす
経営には、競合に打ち勝つためにいろいろな資産があります。
商品力、人材力、資金力、情報力、マーケティング力。
これらの資産も、使い方を間違うと「凶器」になってしまいます。
例えば、価格破壊を起こせば、市場は乱れます。
金銭欲に走れば、消費者をだましてしまうかもしれません。
法律を守らなければ、間違った商品の販売にもつながります。
組織の倫理が乱れれば、不祥事が起こって周りに迷惑が掛かります。
そのようなことがないように、企業のリーダーは常に「徳」にかなった経営を心掛けることです。
社員や企業に関わる人たちが
豊かになること、
社会の発展に貢献すること、
世の中の人々が幸せになること、
そんな経営が「徳」につながるのではないでしょうか。
くれぐれも企業の資産は正しく使い、「徳」のあふれる企業にしましょう。
編集後記
明の時代に書かれた思想書「菜根譚(さいこんたん)」の中に、「徳は事業の基(もと)なり」という言葉があります。
リーダーは、徳を磨かなければ事業を発展させることはできない、という意味です。
さらに、「徳は才の主、才は徳の奴(ど)なり」とも言っています。
徳があってこその才能、ということですね。
我が国の政治家や官僚は、どうでしょうか。