VRIO分析
2021/2/23配信
「ビジネス理論かんたん解説 No.20」
今回ご紹介するのは「VRIO分析」です。
VRIO分析
◆ VRIO分析とは
経営戦略を立てるときには、外部環境と内部環境を分析します。
外部環境を分析する方法としてPEST分析がありますが、VRIO分析は内部環境(自社)を分析するツールです。
VRIOフレームワークとも言います。
この手法は米国オハイオ州立大学の経営学者ジェイ・B・バーニー教授が1991年に提唱したものです。
簡単に言えば、企業の経営資源について分析し、その強みを最大限活かすことで競争の優位性を出すためのツールになります。
VRIO分析では、自社の経営資源を次の4つの要素から分析をします。
- 経済価値(Value)
- 希少性(Rarity)
- 模倣可能性(Imitability)
- 組織(Organization)
そして、分析をする経営資源は、人・モノ・資金・情報・組織です。
それらの資源についてそれぞれ市場での競争優位性を把握していきます。
分析はV→R→I→Oの順に行い、「Yes」と評価された資源が「強み」ということになるわけです。
この分析によって、市場での競争優位性を見極め、効果的な施策を講じていくことになります。
なお戦略論は、ポーターに代表されるポジショニング学派と内部資源理論派に分かれていますが、バーニーのVRIO分析は後者の代表的なものです。
◆ VRIO分析の実行ステップ
VRIO分析の実行ステップは
- 使用ツールの決定
- 経営資源の評価
- 強みの質と競争優位性の見極め
- 戦略や施策の検討
の4つに大別できます。
そして、VRIO分析の一連の流れは以下の通りです。
1.見極めに使用するツールを選択する
VRIO分析には一般的に「一覧表」か「フローチャート」のいずれかのツールが用いられています。
「一覧表分析」は全ての評価項目に対して分析を実施する方法で、「どの評価項目に注力することで継続的な競争優位性を得られるのか」を明らかにすることができます。
一方、フローチャート分析は、分析情報量は最低限となりますがスピーディーに多くの経営資源を分析することができます。
2.価値(Value)の評価
VRIO分析における価値とは経済的価値や社会的価値のことです。
「組織や顧客、社会全体に対して多くの利益をもたらしているか」という点に注目して評価を行います。
3.希少性(Rarity)の評価
希少性は販売戦略成功の鍵となる重要な要素です。
「市場において珍しく、希少価値の高いものであるか」という点に注目して評価を行います。
4.模倣可能性(Imitability)の評価
模倣可能性が高ければ高いほど持続性が高まり、リピーター率の増加や新規顧客の獲得、市場シェアの拡大などが可能となります。
模倣を困難にさせる要素としてあげられるのが、「独自の歴史的条件」、「因果関係不明性」、「社会的複雑性」、「特許」の4つです。
5.組織(Organization)の評価
経営資源を自社の中核であるコア・コンピタンスに育て上げるためには組織全体の理解と協力が必要不可欠です。
「経営資源が生み出す価値や希少性、模倣可能性を全従業員が正しく理解し、競争優位性の維持向上を意識的に図る組織体制を構築することができているか」という点に注目して評価をします。
6.強みの質と競争優位性の見極め
全ての評価項目に対する評価を終えたら、それらの評価結果を基に個々の経営資源が持つ強みの質と競争優位性の見極めを行っていきます。
7.戦略や施策を検討する
最後に、競争優位性の維持向上を実現させるための戦略や施策を検討していくことが必要です。
一連の作業を通じて情報を統合し、競争優位性の維持や向上に効果的な戦略や施策を検討していくことになります。
これがVRIO分析の流れです。
簡単な方法のようですが、結構複雑な手法にも感じられます。
編集後記
周りにVRIO分析を活用している経営コンサルタントは見当たりません。
VRIO分析は、戦略立案時ではなく後から競争優位を検討するのに有効な分析法だからでしょうか。
内部分析は、3C分析やSWOT分析でも出来てしまうからかもしれません。
それでも、経営コンサルタントとして知っておくべき手法ではあります。