ナレッジ・マネジメント
2021/6/29配信
「ビジネス理論かんたん解説 No.26」
今回ご紹介するのは「ナレッジ・マネジメント」です。
ナレッジ・マネジメント
◆ ナレッジ・マネジメントとは
ナレッジ・マネジメントは、「知識経営」と訳されます。
1990年代の初頭に経営学者の野中郁次郎教授が提唱した経営理論です。
企業の個々人が持つ言葉や数字で表現しにくい技術やノウハウ(暗黙知)を、言葉や数式で表現できる知識(形式知)に変え、それを相互交換しあうことで、新たな創造を行う経営手法を言います。
簡単に言えば、従業員一人一人が持つノウハウを、企業内でシェアをするということです。
ナレッジ・マネジメントを効果的に活用すれば、企業の競争優位性を向上させることが出来ます。
そして、正しく運用すれば、知的情報が資産として役立ち、業務効率化などさまざまな効果を発揮する経営手法です。
テレワークの拡大など、日本での働き方が変化している今、必要な手法だと言えます。
◆ ナレッジ・マネジメントの4段階
ナレッジ・マネジメント実現のために、4つのプロセスが提案されています。
1.共同化(Socialization)
共通体験などによって、暗黙知を獲得・伝達します。
2.表出化(Externalization)
得られた暗黙知を共有できるよう、形式知に変換します。
3.結合化(Combination)
洗い出された形式知同士を組み合わせて、新たな知識を創造します。
4.内面化(Internalization)
新たに創造された知識を組織に広め、新たな暗黙知として習得します。
この4つのプロセスは、その頭文字をとってSECI(セキ)モデルと呼ばれます。
なお、「暗黙知」とは、ベテランの経験知識やノウハウなど、個人が持っている言語化されていない知識で、「形式知」は、言語化された知識のことです。
SECIモデルを回すことで、企業は新たな知識を創造できます。
◆ ナレッジ・マネジメントの効果
ナレッジ・マネジメントを行うことによって、企業には次の効果があります。
・作業の効率化
ベテランの業務フローや顧客への対応など、業務全般に関するナレッジやノウハウを可視化することで、作業の効率化を図ることが出来ます。
・属人化を防ぐ
担当者だけが知っている効率的な業務の進め方を可視化しておけば、担当者がいないと業務の対応ができない、ということをなくせます。
・ノウハウ、知識の共有によるスキルアップ
社員全員が業務に必要なノウハウにアクセスできるので、従業員のスキルアップにつながります。
このようなことが、ナレッジ・マネジメントの効果です。
◆ ナレッジ・マネジメントの運用法
ナレッジ・マネジメントは難しそうですが、実際はそんなに難しくありません。
朝礼や日報で情報共有する仕組みも、ナレッジ・マネジメントと言えます。
ただし、紙ベースではなくデータベースで情報を共有蓄積することです。
ナレッジ・マネジメント運用ツール、手法として、次のようなものがあります。
・マニュアル
暗黙知を形式知化する代表的な手法です。
電子マニュアルなどにして、従業員に分かりやすくアクセスしやすい形にすることが求められます。
・グループウエア
「社内イントラネット」を導入すれば、全社員が社内文書や重要情報にアクセスできますし、営業ノウハウや技術もデータベース化することができます。
メール、チャットなどによるコミュニケーションや、スケジュール管理といったことも出来る方法です。
・CRM(顧客関係管理)
顧客情報や営業活動情報も運用ソフトを使えば、情報共有が可能です。
顧客プロフィールや商談スケジュールといった情報も共有できます。
・エンタープライズサーチ
企業向けの検索エンジンで、社内情報を検索することに特化したシステムです。
これらの情報も、今後はAIによるディープラーニングが進んでいき、より正確で効果的なナレッジ・マネジメントが出来る時代になっていくことでしょう。
編集後記
人材の流動化により、個人の知識やノウハウが企業に蓄積できにくくなっている時代です。
ナレッジ・マネジメントは、理論としてではなく、実際に必要とされている経営手法だと言えます。
そして、インターネットにより、スマホやモバイル端末を使った運用が必須にもなってきました。