愚者は成事に闇(くら)く、智者は未萌に見る
2021/7/6配信
「中国古典から学ぶ経営 No.26」
今回は「戦国策」からの言葉です。
愚者は成事に闇(くら)く、智者は未萌に見る
◆ 戦国策とは
これは、中国前漢時代に編纂された歴史書「戦国策」からの言葉です。
「戦国策」は、前回ご紹介した「説苑」の作者である、劉向(りゅうきょう)によるものです。
中国戦国時代の遊説の士の言説、国策、献策その他の逸話が編集されています。
日本では、江戸時代に広く読まれた書物です。
「戦国策」の文章は大変優れていて、「史記」を書いた司馬遷も参考にしたと言われています。
◆ 言葉の意味
「愚者は成事に闇(くら)く、智者は未萌に見る」という言葉の意味は、
「愚かな人は、ものごとが形になって現れてきても、まだそれに気が付かず、優れた人は形に現れる前に適切な対策を講じる」といったことです。
例えば、働き方改革が、世の中の流れです。
かつてセクハラ問題で辞任した官僚がいましたが、パワハラ、セクハラといった働き方の問題に鈍感だったのでしょう。
これは「成事に闇い」と言っていいでしょう。
一方、フェイスブックのザッカーバーグ、アマゾンのベゾス、アップルのジョブスなどは、「未萌」を見ていました。
今や、世界を牛耳っています。
そして、現在の「未萌」は、「AI」です。
今後、AIによって世の中の動きは大きく変化していきます。
インターネットが世の中の仕組みを変えた以上にAIは変化をもたらすでしょう。
ただし、引き続きGAFAが世の中を席巻していくとは限りません。
新しいプレーヤーが登場してくるはずです。
はたして、「智者」はどこに潜んでいるのでしょうか。
◆ 経営に活かす
数多くのベンチャー企業が「未萌」を見ています。
バイオテクノロジー、ロボット、自動運転、ドローン、AR、VR、無人販売、再生エネルギー・・・
彼らが世の中の変化に対応していくことでしょう。
その一方で、老舗と言われる企業や、長年生き残ってきた企業は、その時々の世の中の変化をとらえて変化してきたからこそ、今につながっています。
どちらにしても、重要なのはどのようにビジネス化をしていくかです。
GAFAの隆盛は、それが出来たからでしょう。
そして、未萌を見るには、情報収集力と感応力が必要です。
変化に気がつき、それにうまく対応することこそが、経営の基本だと言えます。
編集後記
「中庸」には、「智者はこれに過ぎ、愚者は及ばず」という言葉があります。
変化に気がつかないのはダメだが、変化に気がつき過ぎてもダメだということです。
気がつき過ぎるとかえって先走ってしまい、成功に至らないこともあるという戒めでしょうか。
なかなか難しいものですね。