日本経営士会中部支部

2022-11-29

職場ハラスメントを防止

2022/11/29配信


「続・コンサルの現場 No.21」

職場ハラスメントの事例とそのハラスメント防止法のお話です。


職場ハラスメントを防止

◆ A社へのクレームが続く

A社長は、以前よりT部品製造の生産性が低い為、BメーカーのK型機械を導入することにいたしました。

しかしながらBメーカーのK型機械はパイオニア的方式であり、日本では実績が少なく一部の企業にしか導入されていませんでした。

それでもA社長は、元々技術屋でしたので、自社の競争力をアップするため、Bメーカーと協力し、改良していけば競争力がアップできるとの思いでK型機械の導入を決断いたしました。

ところが、いざ導入してみたもののT部品製造は以前より生産性が低下したばかりか、歩留まりが低く、更には納品先より毎日、不具合品クレームの連続となったのです。

A社長とBメーカーの技術者とで検討しK型機械の改良を重ねるも思うように成果が出ません。

それは主にK型機械の各パーツ精度の設計が悪いことと、方式が理論上と現実とのミスマッチによることが原因でした。

◆ ハラスメント発生

納品先よりクレームが入るため、このK型機械担当のA社のM主任はその度毎に、A社長にその状況報告をしておりました。

しかし更にクレームが増えてくるとA社長は、M主任にその状況報告する際に、赤旗と白旗をもって来なさいと言うようになってきたのです。

赤旗はクレームが出ている時、白旗はクレームの無い時にA社長との打合せをする際に示せとのこと。

その上「お前が上手くやらないからだ」と叱責されます。

つまりA社長は、クレームに対するM主任の仕事の仕方が悪いと決めつけて来たのです。

いわゆる上司の部下に対するハラスメント状態となってしまいました。

M主任は、毎日クレーム対応に追われ、A社長よりこのようなハラスメントを受け、心身ともに疲弊していき鬱状態となっていったのです。


結局この状況が1年以上続いたため、A社役員会にてBメーカーのK型機械をあきらめ他社製に切り替え、順調にT部品を製造することができるようになりました。

その結果、この1年余りで、A社長の独断によりA社の信用を失墜させ、社内もギクシャクし、大きな損失となったのです。

中小企業の経営者の独断による判断が、従業員に対するパワハラにつながってしまいました。

◆ パワハラ防止法

今回の事例のM主任は、社長による精神的なパワハラ攻撃を受けたのですが従業員の精神を疲弊させてはならないのです。

2022年4月1日より「改正、労働施策総合推進法」通称「パワハラ防止法」が中小企業にも義務化されました。

これには下記のとおり、パワハラとはの3つの定義があります。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えるもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

そして、下記6つの言動がパワハラに当たるとしています。

  1. 身体的攻撃
  2. 精神的攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大要求
  5. 過少要求
  6. 個の侵害

企業は、これらを就業規則に盛り込んだり、行ってはいけない旨の方針を文書化し従業員に配布したり、パワハラ防止法の研修やセミナーなどを実施することが求められています。

編集後記

最近はこのハラスメントを防止する意識が高まりつつある状況ですが、まだまだ上司のハラスメントは、中小企業においては守られてない会社や就業規則にパワハラ防止規定など決められてない会社があるかと思います。

「従業員が明るく会社に行きたい」とか「楽しく仕事が出来るよう」にする。

経営者は、パワハラ防止に積極的に取組むことにより会社が良くなっていくのではないでしょうか。


(文責:経営士 三品富義)

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