成果の上がるコミュニケーションとは
2022/4/5配信
「実践経営講座 No.9」
成果につながる社内コミュニケーションがテーマです。
成果の上がるコミュニケーションとは
◆ コミュニケーションを分けてみる
コミュニケーションには、個人のコミュニケーションと組織のコミュニケーションがあります。
会社も組織ですが、会社のコミュニケーションは、社内と顧客のコミュニケーションに分けられます。
会社が利益を得るには、顧客とのコミュニケーションが最も重要です。
ただし、顧客が満足する製品・サービスの提供を可能にするためには、社内でのコミュニケーションが十分に機能していることが前提です。
アイデア出しのコミュニケーションの場がなく新製品の開発が進まない。
生産部門と販売部門のコミュニケーションが悪く顧客のニーズに応えられない。
コミュニケーション不足で、目標未達の要因と打ち手が共有できない。
開発、生産、営業の現場で何か問題があると真っ先に机上に乗せられるのが「コミュニケーション」です。
目標が未達なのは「報連相」が疎かで、計画に対し「PDCA」が上手く回っていないからだ、その原因はコミュニケーションにある。
だから、問題を解決するにはコミュニケーションを円滑にすることが第一の解決策であると。
しかし、漠然とコミュニケーションの円滑化に取組むだけで、本当に問題の解決となるのでしょうか。
◆ ホンダの「ワイガヤ」、トリンプの「がんばるタイム」
ホンダの「ワイガヤ」とは、役職、職域や性別の違いを越えてワイワイガヤガヤ話し合い、新車開発や業務効率向上のアイデアを出し合うミーティング手法です。
「ワイガヤ」は、コミュニケーションを円滑にして、多様な発想からイノベーションを創出するホンダの企業文化とも言えそうです。
トリンプの「がんばるタイム」は、1日のうち2時間、職場内のコミュニケーションを遮断し業務に集中する仕組みです。
私語禁止、上司は部下に指示出しをしない、電話・コピーの使用も禁止し、集中的に業務を効率化して生産性を高めるユニークな取り組みです。
「ワイガヤ」は、多人数で時間を費やす割に革新的なアイデアがそう簡単に生まれるわけでもありません。
「がんばるタイム」も社内の緊急時のルール決めや取引先から事前に協力を取付けておくなどの環境整備と従前の段取りが前提となります。
コミュニケーションを活性化する「ワイガヤ」、コミュニケーションを遮断する「がんばるタイム」。
相反する取組みですが、コミュニケーションの活性化も遮断も手段であって、目的は製品開発や生産性向上などの成果です。
「ワイガヤ」「がんばるタイム」は、制約の多い中小企業がそのまま導入するのは難しいかもしれません。
年中ではなく「ワイガヤ」月間を定め年に何回か実施する、社内一斉ではなく部署ごとに「がんばるタイム」を導入するなど、工夫次第で中小企業も取組みは可能かと思います。
取組みで成果を上げるには、普段からコミュニケーションを円滑にする職場の雰囲気作りも大切です。
社内では「社長」「部長」の役職名ではなく、全員「〇〇さん」と呼び合うなども方策の一つです。
◆ 成果の上がるコミュニケーション
コミュニケーションを円滑にするために、職域、役職にかかわらず何でも話合える場づくりをしましょう。
もっともなことですが、組織のコミュニケーションは、成果に焦点を合わせることが大前提です。
成果を目的とせず何でも言い合えるだけでは、出来ない理由を言い訳で繕い合う、悪しきコミュニケーションに成り果てかねません。
成果に焦点を合わせるとは、全社で経営方針や戦略を理解し、目標と達成手順を共有することで、その手段がコミュニケーションです。
何のためのコミュニケーションなのか、手段が目的になっていないか、時々は問い直してみたいものです。
編集後記
地方経済総合研究所の「2021年度新卒者採用に関する動向調査」では、採用の際に重視する項目で「コミュニケーション能力」との回答は、87.3%で前回と同じく1位でした。
同様の調査は経団連でも2018年度まで実施され「コミュニケーション能力」との回答が15年連続1位でした。
コミュニケーションは、企業にとって普遍的な経営課題と言えそうです。
(文責:経営士 江口敬一)