経営管理の核心
2022/8/9配信
「実践経営講座 No.15」
「経営管理」がテーマです。
経営コンサルタントには一般用語でも、中小企業の社長には何か違和感のある言葉です。
ですが「経営」と「経営管理」の違いが分かると、経営の全体像が理解できるという話です。
経営管理の核心
◆ 経営管理とは何か?
「経営管理」とは、企業活動の現状と経営目標の差異を把握し、経営目標の達成に向けヒト、カネ、モノといった経営資源を状況に応じ分配、管理するプロセスや行為のことです。
経営資源を効率よく事業に投入し、組織全体で企業価値の最大化を計ることが、経営管理を担う者の役割です。
経営管理に携わる人材には、生産管理、販売管理、購買管理、人事管理などの各部門、部署との分業、連携を調整、統括する能力が求められます。
中小企業では殆どの場合、経営管理の役割を担えるのは社長一人です。
そのため「経営と経営管理は、何が違うのか?」社長が、経営管理の言葉に違和感を持っても不思議ではありません。
経営用語には「経営企画」という言葉もあります。
「経営企画」とは、経営理念、ビジョンに基づき中長期の経営目標を定め、計画と戦略を立案することです。
企画と管理の視点で、経営の全体像を捉えると
経営 =経営企画 +経営管理 、との関係性が見えてきます。
企業経営において経営企画と経営管理は、表裏一体です。
経営企画と経営管理が文脈で繋がれば、社長の違和感も無くなることでしょう。
◆ 経営管理の核心
経営目標を達成するには、全社で理念、ビジョンと経営目標、戦略を共有し、開発、生産、販売のサイクルを組織全体で、効率よく回転させる必要があります。
目標に対する結果を年度、半期、4半期、月次でモニタリングし、全社をまとめ上げ、目標達成に向け経営資源の分配、部門間の調整をコントロールすることが、経営管理の全体像です。
経営分析の結果や想定外の環境変化によっては、内部統制の強化や組織の再編を担うのも、経営管理の役割です。
モニタリングの前提は、ビジョンや経営目標に沿って重要業績評価指標(Key Performance Indicator : KPI)を定めることです。
KPIとは、全体の経営目標達成のため、部門や個人がプロセスの段階で課題となる指標のことです。
営業部門では商談数や成約率、生産部門では、原価率、稼働率などがKPIとして設定されます。
経営目標の中に、労務環境の改善があれば、有給取得率などもKPIとなります。
経営目標をKPIで関連付け、設定されるのが、部門、個人のアクションプランです。
目標達成に向け、毎月、月次で目標と差異をアクションプランと照合し、PDCAを的確に回すことが経営管理の核心です。
◆ 経営管理の実際
中期経営計画が、絵に描いた餅に終わる原因の多くは、KPIの不明瞭さです。
経営計画で示した数値目標を部門、社員各人に割り振るだけで、後は任せ切り。
それでは、PDCAも回らず計画倒れになるのも当然です。
実際、中期経営計画も部門ごとの数値計画までで、KPIを設定し部門、個人のアクションプランの策定まで行う中小企業は少ないようです。
中小企業の社長は、日々の業務に追われ、そこまで経営を管理するのは難しい状況だと思われます。
それでも毎月、月次決算と共にアクションプランの進捗をモニタリングし、打ち手を施し、的確な経営管理がなされない限り、事業の発展は望めません。
正しい経営管理に、月次決算とPDCAは欠かせません。
社長にとって最大の課題は、社長自身が経営管理のための時間を作ることです。
時間が足りない中小企業の社長には、経営管理のサポートを経営コンサルタントに依頼する選択肢もあります。
管理手法の提供や情報の整理を経営コンサルタントに任せれば、社長は、経営管理の意思決定に集中できます。
この場合、経営管理を正しく理解し、実践経験のある経営コンサルタントを如何に選ぶかが、課題となります。
定義、理論、手法も含め、様々な経営要素をコンテンツに、「経営」と「管理」の文脈を読み解いてみると、経営管理の主題と本質が見えてくるかもしれません。
編集後記
経営目標=主題(テーマ)、
経営資源=内容(コンテンツ)、
分業と連携=文脈(コンテクスト)。
経営を小説の構成のように、主題、内容、文脈に分けてみると、全体像の一面が掴めるかもしれません。
〇〇経営、〇〇戦略、〇〇マネジメント、〇〇マーケティングなども、主題、内容、文脈の視点で見ると理解しやすいかもしれません。
見るポイントは、主題、内容、文脈が、明瞭か、足りている、繋がっているか、です。
例えば「環境経営」、主題は?内容は?「環境」と「経営」は、どんな文脈で繋がっているのか?の様にです。
(文責:経営士 江口敬一)