赤字になった会社が業績を回復するには
2022/8/23配信
「儲かる会社になるヒント No.16」
テーマは「赤字になった会社が業績を回復するには」です。
コロナ禍で、銀行融資を受けた会社も多いことでしょう。
その際、銀行は今後の経営アドバイスをしてくれたはずです。
とはいえ、業績が良くなるための具体策を示してくれたかどうかは分かりません。
銀行は、必ずしも経営やマーケティングの専門家ではないからです。
赤字になった会社が業績を回復するには
◆ 銀行の回答
この数年売上が落ち込んで、とうとう赤字になってしまった会社があります。
経営者は、思い悩んだ末に取引銀行に相談に行きました。
長年取引をしている銀行なので、良い解決策を教えてくれると思ったのです。
ところが、銀行の担当者は会社の決算書を見て、おもむろに言いました。
「この決算内容では、これからの融資条件を厳しくするしかないですね」
経営者は、まったく思惑はずれの銀行の対応に、うろたえるばかりです。
それでも何とか解決方法を教えてもらおうと食い下がりました。
すると、「赤字を解消するには、従業員を減らすことですね」。
これが銀行からの解決案です。
経営改善について銀行に相談をすれば、ほぼ回答は決まっています。
業績を回復するには、「経費と在庫を減らすことが優先」というのが銀行の定石です。
この会社の場合は、在庫も一般の経費も切り詰めていますから、残るは人件費です。
その結果、従業員を解雇することを提案されてしまいました。
◆ 給与は人件費か?
しかし、本当にそれで業績が回復するのでしょうか。
確かに人を減らせば一時的に経費は減りますが、これは数字から見ただけのものです。
この会社は、売上が減ってきて赤字になったわけですから、
人を減らしても根本的な解決にはなりません。
それでも、銀行はまずパートさんに辞めてもらうように勧めてきました。
もしかしたら、これで決算の帳尻は会うかもしれません。
しかし、パートさんとはいえ、業務に力を発揮してきた重要な戦力です。
パートさんが辞めた後、残りのメンバーでその穴を埋められるのでしょうか。
さらに、そのパートさんにとって、「給与」は人件費という「費用」ではありません。
大事な生活費です。
そのことを考えれば、そんなに簡単に辞めさせられるものではありません。
売上が減ったのは、パートさんが悪いのではなく、経営者の経営がまずいからそうなったのです。
この会社がまず打つべき手は、経営者の給与を大幅にカットすることでした。
そして、経営者はそうしました。
経営者はそのうえで銀行に相談をしたというわけです。
◆ 答えは原点にある
であれば、次にやることは、売上を上げる方法を必死で考えることです。
今までと同じことをしていても、売上は増えません。
新しい取引先候補をリストアップして、一社一社回って会社の宣伝をしてはどうでしょう。
また、手元にある顧客台帳を見て、せっせと手書きの手紙を出してはどうでしょう。
電話やFAXやメールで商品やサービスの案内をするのもいいでしょう。
いずれにしても、売上やお客様が増えるのをじっと待っている余裕はありません。
そのためには、会社を始めた時のことを思い出すことです。
とにかく懸命に商品開発や顧客サービスに努めたではありませんか。
手作りのパンフレットや広告宣伝にも精を出したではありませんか。
そして、初めて商品が売れた時の、あの喜びを思い出してください。
原点に戻れば、きっとこの会社は生き返ります。
従業員は経費ではなく財産です。
一緒に働く人たちの生活を守るのも、経営者の務めではないでしょうか。
編集後記
ある会社のために税理士事務所が作った「経営計画書」を見ました。
商品別年間販売計画表も作られていますが、単なる数字の羅列です。
どんな戦略で、どうやって実行していくかは書かれていません。
今回の事例に登場した銀行も、同じようなものだったかもしれません。
(文責:経営士 梅本泰則)