社員の心身の健康管理とは
2022/10/18配信
「続・コンサルの現場 No.19」
労災補償を受け、それにより退職させられたパートタイム勤務、Aさんのお話です。
社員の心身の健康管理とは
◆ 勤務時間の延長
Aさんは、長年勤めた会社を定年退職し、午前中勤務条件で、B社のパート勤務につきました。
その仕事は、毎日車でB社より15分位の出向先での半日の仕事でした。
当初、1か月位は見習いであり、半日勤務であったのですが、徐々に出向先の影響で勤務時間が延びていきました。
Aさんは、最初の労働条件であった勤務時間が違ってきていることを上司に伝え、何とかして欲しい要望をしていたのですが、代わりに人がいないから延長にて頼むと言われていたのです。
◆ 勤務先移転と出向先による影響
この状況が2年位続き、B社が急に移転することになりました。
今迄、出向先までB社より片道15分が30分位に延び、それにより退社時間も遅くなってしまったのです。
その後、1カ月位過ぎたある日、出向先にてトラブルが発生し、Aさんはその影響を受けなかなか仕事が終われずB社に戻れません。
Aさんは、上司に出向先のトラブルによりB社に戻れない旨を伝え、交替要員をお願いしたのです。
しかし、上司は相変わらず、交替要員がいないので我慢してくれと言われます。
Aさんは上司の度重なる返答にストレスがピークになっていたようです。
◆ 交通事故発生
やっとB社に戻ろうとした時、すでに18:30になっていました。
外は真っ暗、その上どしゃぶりの雨です。
Aさんは早くB社に戻ろうと気が焦りつつ社用車の軽自動車を運転していました。
夜暗く、どしゃぶりで視界が悪く、2車線中の右側を急いで走行していた時です。
次の瞬間、その社用車は何かに真正面から衝突し、その車体は宙に飛び上がり、左車線に「どすん」と下に落ちました。
その衝突物は、右折車線専用レーンの先にある分離帯(コンクリート製)でした。
Aさんはその時、何が起きたか分かりませんでしたが、とにかくB社に携帯で事故の報告をしました。
Aさんの後ろにいた車は、幸いにもAさんの車との衝突を免れ、その運転手が救急車を手配してくれたのです。
Aさんは、右足が痛く自分で車から出ることができません。
Aさんは意識がはっきりしていたので、その時は何故この軽自動車のエアーバックが作動しなかったのか不可解に思っていました。
後日確認したところ、それは古い軽自動車でエアーバックが付いていないとのことでした。
やがて、救急車でAさんは病院に運ばれたのですが、額がフロントガラスの破片で20cm位切れ、右足踵は本能的に衝突する際の急ブレーキを踏んだことにより、その反動で粉砕骨折となりました。
Aさんの運転ミスとは言え、ひとつ間違っていたら死亡事故となっていたのです。
ICUに2日間、入院生活3か月、後遺症も少し残りましたが半年後は、杖無しで生活できるまでに回復しました。
勤務中の事故なので労災扱いとなりましたが、仕事は続けられなくなり、その後退職させられたのです。
Aさんは、パートタイムだからと言って、あまりにも何も対応してくれないことや、B社の移転も知らされず不慣れな道を走っていたこと、エアーバックの無い車を使わせることなど、パート労働に対して理不尽なことが多かったことが問題でなかったかと思っています。
◆ 従業員の健康経営に欠如
本年4月1日に施行された改正労働施策総合推進法で「パワーハラスメント防止装置」が義務付けられているのです。
B社はパートであっても社員の心身の健康管理や人権に配慮した健康経営に欠如した会社かと思います。
また、パートは非正規社員ですが、それでも1人の人間であり、上司との信頼関係を構築していかねばならないのです。
会社は、交通事故を起こした人の責任で終わるのでなく、その背景となるものが何であるかの思慮をしなければなりません。
編集後記
今回のお話は、パートタイムの非正規労働者に対する上司の対応が問題ではありますが、従業員同志や経営者の人間としての信頼関係を築いていかねばならない氷山の一角の内容でした。
健康経営とは何かを掘り下げ、見直していただければと願うものです。
(文責:経営士 三品富義)