恒産なければ因って恒心なし(孟子)
2020/4/21配信
「中国古典から学ぶ経営 No.5」
今回は「孟子」からの言葉です。
恒産なければ因って恒心なし(孟子)
◆ 孟子とは
孟子は、中国戦国時代(紀元前300年代)の儒学者です。
孔子の孫弟子にあたります。
そして、孟子は「孔孟の教え」と言われるように、孔子と並び称される聖人です。
その孟子の言行をまとめた書が、「孟子」として伝えられています。
孟子は性善説を唱えたことでも有名で、「孟子」は儒教の重要なテキストの一つです。
ただし、読んでみるとかなり難解な言葉や言い回しが多く、「論語」と比べるととっつきにくい感じがします。
◆ 言葉の意味
「恒産」とは生計を支えるに足るだけの収入があること。
「恒心」とはどんなに困っても悪に走らないこと。
つまり、安定した収入があれば人々は悪いことはしない、という意味です。
ですから、孟子は為政者は人民の生活の安定を図ることが重要だと説いています。
現代の政治においても、それは同じです。
国民の生活が安定してこそ平和な社会になります。
そこから考えると、資本主義社会はどうでしょう。
日本は比較的貧富の差は少ないとは思いますが、世界的に見れば人々の貧富の差が広がっています。
生活が安定しない弱者も多いのが現代社会です。
それによって、戦争や悲惨な事件も起こってきます。
過剰な「恒産」に走っている人が多いからかもしれません。
いずれにしても、「恒心」のために「恒産」を考える政治や社会であって欲しいものです。
◆ 経営に活かす
孟子のこの言葉から経営を見てみると、経営者は、まず社員の生活の安定を考えよ、ということでしょう。
働き方改革とかいって、非正規社員が増えているのが現状です。
これでは社員の生活が安定するとは言えません。
それを解決するために、政治が手を差し伸べてくれるのでしょうか。
なかなかそうはうまく行きません。
それならば、企業が社員の生活を考えるべきです。
そうすれば、社会の役に立つ仕事にまい進してくれる社員が増えます。
経費削減のために人員整理するのは、孟子からすればもってのほかです。
一方では、社員を辞めさせないことを信念にしている企業もあります。
立派です。
もちろん、「恒産」のためには本人の努力や生活設計が必要なのは言うまでもありません。
企業はそのサポートをすることも大切です。
そんなことを、この孟子のことばは教えてくれています。
編集後記
孟子には「心を養うは寡欲より善きはなし」という言葉もあります。
心を正しくまっすぐに育てるには欲望を少なくするのが一番良い、ということです。
「足るを知る」ということでしょうか。
とはいえ、資本主義は欲望の世界です。
「恒心」は育ちにくいかもしれませんね。