シニア人材の活用
2023/12/12配信
「続・コンサルの現場 No.39」
今回は「続・コンサルの現場 No.39」です。
先回の続きで、労働力不足についてシニア人材を活かす経営考えます。
シニア人材の活用
◆ シニアの働く場所がない
筆者の住まいのマンションは、築40数年です。
入居したころは、住民の皆さんは、働き盛りで子育てもあり、活気がありました。
それが最近では、マンションで会う人に挨拶しても返事が返って来ない方が多くなりました。
返事が返ってきても「あー」とか「うー」とか小さな声が返ってくるのみです。
すでに現役を離れ、年金生活で1人住まいの人も多くなって来ています。
ですから人との交流が少なくなり、とっさの挨拶ができなくなったということです。
長年勤めた会社にもかかわらず、役職定年で給与が下がり、モチベーションが低下し、結局は定年退職となっているのが現状かと思います。
そして、退職後、他に仕事を探してもなかなか雇ってくれません。
そうこうしているうちに、運動もせず、引きこもりになっている高齢者は、足腰が弱り、やがて認知症の可能性が高まってしまうのです。
人生100年時代といわれているのですから、まだ働く意欲があるうちに働ける環境を作る必要があります。
人は頭を使い、体を動かし、わくわくする心を持つことが健康だと思うのです。
◆ まだまだ元気なシニアが働ける場がない
日本の総人口は、総務省によると、2023年11月1日現在124,311千人で、前年同月に比べ約600千人減少しています。
また、高齢者(65歳以上)人口は、36,216千人、比率は29.1%、労働生産人口(15歳~64歳)74,005千人です。
2021年のデータですが、高齢者の中で就業している方は25.1%、更にそのうちの65歳~69歳の就業率は、50.3%となっています。
これは、2021年4月施行された、改正高年齢者雇用安定法(65歳まで雇用義務と70歳までの就業確保の努力義務)の影響で改善されてきてはいるのです。
今後の人口はさらに減少し、高齢者割合が増えてくる予測となっています。
しかし、まだまだ元気なシニアが、年齢制限によって働ける場がなかなかないのが現状かと思います。
◆ シニア人材とマッチング
昨今、企業は人手不足と言われていますが、それを解消する方法としてシニアのもっているスキルを活かす経営をしてみてはいかがかと思います。
シニアは、長い就業経験によって大方、様々なスキルを持っているものです。
上場企業にて部長の経歴があるとか、中小企業の社長をしていた、製造工場で特殊技術に携わっていた、大学の教授であったとかなど様々あります。
そこでそのスキルを引き出し、自社経営に役立てるのです。
シニアですから人生経験も豊富なため、社員研修は、ほぼ不要となります。
しかもシニア人材は、働かせていただければ有難いと、まじめで感謝の念で仕事をしてくれます。
パソコンによる文章や表計算、メールができたり、作業標準書なども作ってしまう方もいます。
◆ シニア就職見学会
そのようなシニアの方を募集するにあたり、ある会社では、会社周辺の方を対象にシニア就職見学会を年に一度、実施しています。
会社周辺の方を対象にしている訳は、一つは会社近隣への会社のPRです。
もう一つは、通勤時間(距離)が短く、シニアに負担をかけない徒歩で来られる範囲としているからです。
まず、シニアの方に工場を見学し、仕事の内容を知っていただきます。
その後、従業員を含めたシニア参加者と椅子取りゲーム、じゃんけんゲームなどの懸賞付きレクリエーションを行い、楽しんでいただくのです。
心が和んだところで、参加者のそれぞれの方と面接を行い、その方が自社で就業できるポジションをマッチングさせます。
若い人材に焦点が行きがちですが、シニア人材には教育訓練費用が少なく、人件費の削減にも結び付くかと思います。
編集後記
筆者が住むマンションでは、隣人の奥様に、旦那様は最近見かけないけど、どうされましたかと聞けば、足が悪く家に引きこもっているとか、入院しているとか言います。
老いていくのは仕方がないかもしれませんが、仕事を続けられていたならばこのようなことにならず元気なシニアでいたかもしれません。
(文責:経営士 三品富義)