安くしなくても、お客様は離れない
2024/1/30配信
「儲かる会社になるヒント No.41」
テーマは「安くしなくても、お客様は離れない」です。
小売店の話をします。
「安い」ことを売りにしている競合店があるのは、小売業の常です。
その中でも、値引きをしないでお客を掴んでいるお店があります。
どうして、そんなことが出来るのでしょう。
安くしなくても、お客様は離れない
◆ 値切るお客
どのお店にも、「安くしてくれ」と値切るお客様がいます。
その要求に負けてしまうお店もあるでしょう。
しかし、筆者がコンサルティングをしているお店に、こんなところがあります。
お客様が店員さんに「もう少しまけてよ」と詰め寄っています。
店員さんは、笑顔できっぱりと言いました。「それは出来かねます」。
すると、お客様は「あっちの店の方が安いよ。だからまけてよ」。
店員さんは、すかさず「誠に申し訳ございません。安い商品をお求めでしたら、そちらのお店でお買い求め願います」と断ります。
そのお客様は、手にした商品を棚に戻して出て行くことに。
筆者は、店員さんにきいてみました。「あんな対応で大丈夫なのですか?」。
「大丈夫です。値段だけで買いに来られるお客様は、うちのお客様ではありませんから」。
なるほど。教育がしっかりされています。
◆ 値段を気にしないお客
すると、また別のお客様が入ってこられました。
「決勝で負けちゃった!」。こんどは、店長が相手をします。
「そうですか、相手のピッチャーは誰だったんですか?」。
どうも、草野球の試合の話のようです。
「ピッチャーは、A君だよ」。
「ああ、新しく入った選手ですね」。
「すごいカーブを投げるんだ」。
「どこの学校から来たんですか?」。
ひとしきり会話が続きます。
10分位してから、お客様は棚の商品をつかみ、「これください」といって店長に差し出します。
「ありがとうございます」。
お客様は、店長に言われたとおりのお金を払って、「また来ます」と言って帰って行かれました。
値段は、安くもなんともありません。
このお店では、よくある光景です。
お客様と、この店長との間には、何か強い信頼関係があるようでした。
◆ お客様との信頼関係を作る方法
どうして、お客様はこのお店を信頼しているのでしょう。
このお店の方針がブレないというのも、一つの理由です。
店主は「安売りを武器にはしない」と決めています。
それだけではありません。
・お客様に対して、とことん親身になる。
・お店の売り物は、信頼と思いやりである。
・お客様は家族と同じだと思ってお付き合いをする。
こんなことを思って、商売を続けておられます。
ですから、「値段が高い」と言われても平気です。
値段でお店を選ぶお客様は、値段で離れていきます。
逆に、お店との信頼関係が出来たお客様は、その関係が崩れない限り離れることはありません。
それが出来るかどうかは、店主としての強い信念です。
他のお店の売り方などに惑わされてはいけません。
また、お客様の「高いなあ」というつぶやきを、気にしてはいけません。
お店がお客様のことを真剣に考えていれば、無責任な売り方は出来ないはずです。
その一方で、値引きをやめようとがんばっているお店があります。
利益率が下がって来たからです。
とはいえ、永年値引きの習慣がついていますので、それを変えるのは大変です。
その理由も分かります。
実は、一番習慣を変えたがらないのは、現場のスタッフだからです。
その習慣を変えることに成功したお店の話は、また別の機会にでも。
編集後記
価格競争は、小売業に限ったことではありません。
どの業種にも起こりうる問題です。
経営者に信念があれば、価格競争に陥ることはありません。
松下幸之助は、「無理をして安く売る必要はない。どんなに安くしても縁のない人は離れていく」と言っています。
安く売って、必要な利益を削ってしまっている会社も多いことでしょう。
(文責:経営士 梅本泰則)