創造と変革の起点は問題意識
2024/12/17配信
「実践経営講座 No.53」
創造と変革の源である「問題意識」がテーマです。
創造と変革の起点は問題意識
◆ 問題意識なくして創造も変革もない
創造と変革の起点は何かといえば、「問題意識」です。
現状に対する疑問や不満を問題とし、解決のカタチ(商品・サービス・仕組み)を生み出そうとする、心の働きが問題意識です。
インクルーシブデザインの事例に、ライターがあります。
南北戦争で片手を失くした人が、マッチを擦れない不満を問題とし、解決のカタチとして生まれたのが、片手で操作できるライターです。
片手でマッチを擦れないのは「当たり前」、片手では「仕方ない」との固定観念に捉われていたなら、ライターの発明はなかったでしょう。
現状を当たり前、仕方がないと見過ごさず、「これでいいのか」「何とかできないか」と考えるのが問題意識。
当たり前、仕方がないと見過ごし、現状に対する問題意識を阻害すのが固定概念。
例えば組織改革の阻害要因が、「どうせ変わらない」「やるだけ無駄」といった固定概念です。
何かを創出したり、現状を変えていくには、固定概念に縛られず「問題意識の感度」を高める必要があります。
では、問題意識の感度を高めるには、どうすればよいのでしょうか。
◆ 問題意識の感度を高める
問題意識の前提となるのが、「目的意識」です。
問題意識は、現状に対し「~でいいのか」「~であるべきだ」「~を実現すべきだ」との思いから発するものです。
この思いは、前提として自身がなすべき目標、役割や使命、それを果たそうとする目的意識がない限り、芽生えません。
問題意識を持ち、現状に問題を見出すには、目的意識が明確であることが前提です。
また問題意識を持つとは、現状を当たり前とする「固定概念に流されない」ということです。
固定概念に流されない基本スタンスとされるのが、次の3つです。
「知っていることをアテハメない」知っている、理解しているとの思い込みを疑い、振り返る。
「答えは、一つではない」見え方、問い方が変われば答えも変わる。
「アウトプットしてみる」他者に問いかけてみると、未知の情報や知見が得られることもある。
自身が当たり前と思うことを見直し、多様な視点で解決策を求め、時には誰かに問いかけ情報をインプットすることが、固定概念に流されず、問題意識の感度を高める条件です。
◆ 問題意識を掘り下げる
「問題意識を掘り下げる」とは、現状をありのままに見るだけでなく、意識的に立ち位置、着眼点、状況、意味合いを変えて、多角的に現状と向き合うことです。
現状のどこをどのように見て、何を問題とし、どんなカタチで解決して見せるのか。
問題意識を高め、掘り下げることで、まだ誰もが見過ごし、見落としていることを問題として抽出する、スキルが養われます。
このスキルと感性が、新しい商品やサービスの開発、提供につながります。
◆ 「THE BODY SHOP」の場合
シャンプーやスキンケア商品を提供する「THE BODY SHOP」は、1976年イギリスに第1号店を誕生させ、今では1500店舗以上を世界に展開しています。
エシカル、SDGsといった概念がまだない時代、直接体に使われるシャンプーやスキンクリームに含まれる、合成化学物質を問題とし、動物実験を行わず天然、自然の原料で商品を開発、販売。
容器も再生可能なプラスチックボトルとし、簡素な包装でお客に渡し、空になった容器は店舗で引き取るなど、自然や環境への配慮。
今では当たり前のことを50年ほど前に、見過ごすことなく問題とし、自然由来の商品とポリシーをカタチにしたことが、世界的事業への成長につながりました。
自宅のキッチンで手作りの商品を売り始めた、創業者のアニータ・ロディクに、大いなる目的意識と問題意識がなければ、この成功はなかったでしょう。
創造と変革の背景には、現状を当たり前とせず、問題をマイニングし、新たなカタチで解決を試みる問題意識が存在します。
固定概念や先入観に流されず、意識的に問題意識を高め、多角的な視点で問題を掘り下げるマインドが、創出と変革をもたらす、イノベーターの資質だと思います。
編集後記
組織改革についても「理念を使命に、ビジョンを実現する」という、目的意識がなければ変革も改革も期待できません。
ありたい姿であるビジョンが不明確では、現状との差異が分からず、問題意識も希薄になるからです。
組織に変革を求めるなら、理念とビジョンを明確にしたうえで、問題意識を共有することが大切です。
(文責:経営士 江口敬一)