禍福は門なし、ただ人の招く所(左伝)
2020/8/4配信
「中国古典から学ぶ経営 No.10」
今回は「左伝(さでん)」からの言葉です。
禍福は門なし、ただ人の招く所(左伝)
◆ 左伝は
この言葉は「左伝」にある言葉です。
「左伝」は孔子が編集したと言われる中国春秋時代の歴史書「春秋」の注釈書として、2000年以上前に魯国の長官、 左丘明(さきゅうめい)が著したものです。
魯国は孔子が生まれ育った地ですね。
「左伝」は、「春秋左氏伝」とも言われます。
◆ 言葉の意味
この言葉の意味は、「幸福も不幸も特別な門があって入ってくるわけではなく、それはいずれも本人が招いているのだ」ということです。
現代でも同じようなことを言いますので、本当に人間のありようは何千年も変わっていないですね。
そして、この言葉は、もともと不当な処遇に腹を立て、勤めを休んでふてくされている人物に向かって、「そんなことでは今よりひどいことになりますよ」といましめたものです。
不当な処遇は自分の行動や考え方が招いたものだと諭しています。
幸福になりたければ、自らの行動や考え方を変えよということです。
ところで、幸福とか不幸ということは、誰が決めるのでしょう。
例えば、他人より収入が低かったり、同僚より出世が出来ないことで不幸だと感じることがあるかもしれません。
人は勝手に自分の基準を作って他人と比較するところから、幸不幸を感じるのだとも言えます。
ですから、左丘明は、本人が幸福だと思えば幸福で、不幸だと思えば不幸なのだ、要は考え方次第だと言っているのではないでしょうか。
◆ 経営に活かす
現代でも経営や商売がうまくいかないとき、景気や天候など周りのせいにする経営者がいます。
実は、これは自ら「禍」を招いているのです。
景気や天候による「禍」が生じたとしても、常日頃からそれに備えた経営をすることで、「禍」は免れます。
そして、コツコツと手を打つことで「福」がやってきます。
つまり、現状を好転させるには、周りのせいにするのではなく、何をしたらよいかを考えるのが経営者の仕事です。
問題の解決に立ち向かう姿勢は、きっと幸福をもたらします。
そんな文化を組織として醸成することも、経営者の役目だと言えるでしょう。
編集後記
左伝には、
「鼎(かなえ)の軽重(けいちょう)を問う」
とか、
「百年河清(かせい)を俟(ま)つ」
といった有名な言葉があります。
そして、今回紹介した言葉に近いものに、
「己を修めて人を責めざれば、則(すなわ)ち難より免る」
という言葉もあります。
ご参考までに。