コトラーの競争戦略
2020/8/18配信
「ビジネス理論かんたん解説 No.11」
今回ご紹介するのは「コトラーの競争戦略」です。
コトラーの競争戦略
◆ 4つの類型
「近代マーケティングの父」であるフィリップ・コトラーは、1980年に企業がおかれている業界の地位に着目し、競争業者の類型を4つに分類することを提唱しました。
したがって、この競争戦略は競争地位戦略とも言われます。
その4つの類型は、経営資源の量の大小と、経営資源の質の高低によって、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーに分けられました。
つまり、
リーダーは、量的にも質的にも経営資源に優れている企業で、業界市場第一位の企業がこれに当たります。
チャレンジャーは、経営資源は多いけれど資源の質が低い企業で、リーダーを追いかける業界2~4位の企業です。
ニッチャーは、経営資源の量は少ないが、質は高い企業を指します。概して規模は大きくない企業です。
フォロワーは、経営資源の量も少なく質も低い企業ということになります。
◆ 4つの類型の例
例えば、生命保険業界で競争地位を分類すると、
リーダー:日本生命
チャレンジャー:第一生命、明治安田生命
ニッチャー:ソニー生命、ライフネット生命
フォロワー:フルラインの中堅生保企業
ということになるでしょうか。
また、化粧品業界を例にとると、
リーダー:資生堂
チャレンジャー:花王(カネボウ)
ニッチャー:アルビオン、オルビス
フォロワー:小規模化粧品会社、訪問販売会社
という感じでしょうか。
◆ 4つの企業がとるべき戦略
コトラーの競争戦略で重要なのはここからです。
これらの分類の、どれが良くてどれが悪いということではありません。
4つの類型、それぞれの取るべき戦略があるのです。
簡単に説明しますと、リーダーがとるべきは「全方位戦略」で、非価格競争で市場を拡大していくのが良いとされます。
もう少し細かく言えば、次の4つがポイントです。
1)周辺需要拡大(市場のパイを広げる)
2)同質化(物まね)
3)非価格対応(低価格競争に入らない)
4)最適シェア維持(利益が最大になるシェアをとる)
チャレンジャーには、二つの戦略があります。
一つはリーダーとの製品差別化をはかる戦略、もう一つは自社よりシェアの小さい下位企業を打ち負かしつつリーダーの地位を奪うという戦略です。
ニッチャーは、他社がまねのできない分野で集中戦略をとり、特定市場におけるナンバーワンを目指します。
フォロワーは、ただちにはリーダーの地位を狙えないので、リーダーとチャレンジャーが及ばない、残りの市場を狙う戦略です。
そのためには、徹底的にリーダーの製品を模倣しながら低価格戦略で市場での生き残りを図るのが良いと、コトラーは説いています。
要するに、コトラーの競争戦略は各企業の業界における地位を見極め、それにふさわしい戦略を選択するための指針だととらえることが出来るでしょう。
編集後記
このコトラーの分類から考えると、中小企業はフォロワーであることが多いでしょう。
しかし、少ない資源を活用してニッチャーとしての戦略をとることもできます。
いずれにしても、企業の資源をよく分析して、そのとるべき戦略をアドバイスしていくのが経営コンサルタントの仕事ですね。