人に接しては則(すなわ)ち渾(すべ)てこれ一団の和気(近思録)
2020/11/17配信
「中国古典から学ぶ経営 No.15」
今回は「近思録」からの言葉です。
人に接しては則(すなわ)ち渾(すべ)てこれ一団の和気(近思録)
◆ 近思録(きんしろく)とは
「近思録(きんしろく)」は宋の時代に書かれた宋学の入門書です。
1176年ころに作られたもので、北宋の4人の学者,周濂渓(しゆうれんけい)、程明道(ていめいどう)、程伊川(ていいせん)、張横渠(ちようおうきよ)の著作や語録の中から重要な言葉がまとめてあります。
南宋の儒学者朱熹(しゆき)が友人の呂祖謙と一緒に編纂しました。
中国のみならず日本・朝鮮で広く読まれた書物です。
日本では特に江戸時代後期に各地の儒学塾で講義されています。
「近思録」の書名は、「論語」の
「博(ひろ)く学んで篤(あつ)く志し、切に問うて近く思う」
からとられました。
◆ 言葉の意味
この言葉の意味は、「人に接するときは温かさをもって接しなさい」ということです。
「和気」とは、なごやかな気分のことを言います。
「和気あいあい」というように使われますね。
私の周りには温かさを感じさせる人物が多くいます。
それが「和気」ある人です。
そして「和気」ある人には人が寄ってきます。
その方が圧倒的に人に好かれるからです。
確かに、冷たさを感じさせたり、とげとげしい雰囲気を持った人には人が集まってきません。
ですから、経営者はいつも難しい顔ばかりをしていてはダメだということです。
◆ 経営に活かす
これは、リーダーシップの話にもつながります。
経営学者の伊丹敬之教授によれば、経営者の3つの役割には「リーダー」「代表者」「設計者」がありますが、まずはリーダーシップが重要です。
人が集まってくるような経営者であれば、リーダーシップが発揮しやすいのは間違いありません。
そして、松下幸之助さんもこう言っています。
「人の上に立つものは、近づきやすい表情でなければならない。人が集まらなければ、どうやって生きた知恵を集めようというのか」
では、「近づきやすい表情」とはどんなものでしょう。
「一団の和気」のように、おだやかな表情なのでしょうか。
しかし、ムリヤリおだやかな表情を作っても、人はそれを見破ります。
ですから、自然ににじみ出るようにならなければなりません。
そのためにはどうしたらいいでしょう。
きっと、松下幸之助さんはこう言うでしょう。
「何事に対しても素直な心であたり、いつも謙虚な姿勢で感謝をしていれば。人が近づきやすい表情になる」
ここは、経営者としての日頃の修練ですね。
編集後記
振り返ってみて、私自身はどうでしょう。
人が寄り付かない表情をしているかもしれません。
反省させられますね。
しかし、少なくとも周りに「和気」を持った人がいることは幸いです。
彼らと一緒にいれば、多少の影響を受けることができるでしょうから。