日に新たに、日々新たに、また日に新たなり(大学)
2021/1/19配信
「中国古典から学ぶ経営 No.18」
今回は「大学」からの言葉です。
日に新たに、日々新たに、また日に新たなり(大学)
◆ 大学とは
中国戦国時代に著された書物です。
実は「大学」は作者が特定されていません。
孔子の弟子の曽子によるものとも、孔子の孫の子思によるものだともいわれています。
それはともかく、宋の時代に官僚試験のテキストである四書五経の一つになったことでも、重要な書物だといえます。
そして、たった1753文字で書かれた短いものですが、実に奥深い内容です。
その内容は「修身、斉家、治国、平天下」のためのエッセンスを説いています。
儒教の政治思想の根幹を要領よくまとめたものです。
その根本的な考え方は「自分をよく磨き、そのうえで人の上に立つ」ことにあり、リーダーや経営者の心得を著わしています。
二宮尊徳が愛読書にしていたということでも有名です。
◆ 言葉の意味
「日に新たに、日々新たに、また日に新たなり」という言葉は新年にふさわしい言葉ですね。
意味は説明するまでもないでしょう。
毎日新たな気持ちで新たな学びを続けていくことで、自分も成長し周りにもいい影響を及ぼすことが大切だ、と言っているわけです。
いわゆる「自己啓発」の教えと言っていいでしょう。
若いうちはそうした気持ちが強いものですが、歳を重ねるとだんだんそうした気持ちが薄らいでくるということもあります。
しかし、それではいけません。
いくつになっても成長し続けることが必要ではないでしょうか。
「大学」では、殷の時代の湯王という名君が、この言葉を洗面器に刻み込んで「修身」の決意を日々新たにしたという逸話とともに紹介されています。
◆ 経営に活かす
経営者は、自ら鍛えなければ誰も鍛えてはくれない存在です。
ですから、いつも新しいことを学び、新しいことに挑戦する姿勢が求められます。
そして、「大学」にはこんな言葉もあります。
「君子は必ずその独りを慎む」
他人が見ていないところでも、絶えず自分の言動をチェックしなければならない、ということです。
また、「徳は本なり、財は末なり」という言葉も出てきます。
経営者が徳のある人間であれば、社員も顧客もついてくる。
そして、自然と会社も大きくなり、財政も豊かになるという意味です。
そのためにも、「日々新たに」自分を鍛えなければなりません。
とはいえ、言うは易し、行うは難しですね。
編集後記
この短い書物からは、いくつも有名な言葉が生まれています。
例えば「中(あた)らずと雖(いえど)も遠からず」とか、
「心ここに在らざれば、視れども見えず」という言葉などは、私たちが普通に使っている言葉です。
「大学」は、なかなか難しい書物ですが、短いのですぐに読めます。
一度トライしてみましょう。