患(わずら)いは忽(ゆるが)せにする所より生じ、禍(わざわい)は細微より起こる
2021/6/15配信
「中国古典から学ぶ経営 No.25」
今回は「説苑(ぜいえん)」からの言葉です。
患(わずら)いは忽(ゆるが)せにする所より生じ、禍(わざわい)は細微より起こる
◆ 説苑(ぜいえん)とは
「説苑」は、前漢の学者・政治家である劉向(りゅうきょう)が選んだ、先秦から漢代までの人物に関する逸話集です。
天子を戒めるために編集されたと言われます。
劉向は、漢を起こした劉邦の血筋に当たり、文章の才を見込まれて、官職に登用された人物です。
劉向には、説苑以外の著作も多く、「戦国策」もその一つとなります。
◆ 言葉の意味
今回の言葉は、説明するまでもありませんが、ちょっとした気のゆるみから大きな事故が起こるし、些細なことから大きな問題につながるということを言っています。
気のゆるみと問題の取り扱いについての戒めです。
人は、むつかしい仕事に取り組んでいる時は、緊張感で張りつめています。
しかし、仕事が順調に運んでいるときには、気のゆるみが生じるものです。
また、何か問題が起こっても、これはまあ些細な問題だからと目をつぶろうとしてしまうことはないでしょうか。
これも人が犯してしまいがちなことです。
その結果、大きな事故や問題になってしまって、いよいよ解決が難しくなります。
ですから、気のゆるみと些細なことに注意することが必要です。
とはいえ、言うは易しでもあります。
人間というものは2千年を経ても、なかなか進歩をしないものですね。
◆ 経営に活かす
経営が順調なときほど、気を引き締めることです。
トヨタの業績は絶好調ですが、豊田章男社長は「大変な時だ」と、さかんに社員に警鐘を鳴らしています。
「患いは忽せにする所より生ずる」ことを知っているからでしょう。
そして以前、大企業による工場での無資格検査や、データ改ざんが問題になった事があります。
これは、きっと些細な問題だと目をつぶってきたことが原因なのでしょう。
そのことで、問題は大きくなってしまいました。
「禍は細微より起こる」ことを肝に銘じていたら、起こらなかったかもしれません。
つまり、経営者は調子の良いときほど、良い気になっては駄目です。
そして、問題の芽は、小さなときに摘んでおくことです。
どちらも、心しておきましょう。
編集後記
説苑には、こんな言葉もあります。
「好んで人の悪を称ずれば、人またその悪を道(い)う」
人の悪口を言えば必ず相手の耳に入り、そのお返しがある、ということです。
悪口を言ってはいけません。
この言葉も、人として心に留めておくべきでしょう。