成果の上がる組織作りの基本
2022/4/26配信
「実践経営講座 No.10」
成果の上がる組織作りがテーマです。
成果の上がる組織作りの基本
◆ 何故、経営計画は絵に描いた餅になるのか
「経営計画は絵に描いた餅」よく聞く言葉です。
実際、社長の思い通りに計画が遂行され、目標が達成されることは少ないようです。
原因の一つに中小企業を取巻く、外部環境の変化が上げられます。これは避けようがありません。
一方、社長と社員の意思疎通不全が原因の場合も。これは自社の問題だけに打ち手があります。
経営方針が思ったほど社員に浸透していなかった。
経営計画に対する社員の戦略理解度が思いのほか低かった。
社長の思いが社員に伝わらず、結果的に経営計画が絵に描いた餅になってしまう。よくあることです。
社長がどういう考えで経営計画を立て、戦略を描いているかが社員に伝わらない限り、計画は思うように遂行されません。
何故、社長の思いは社員に伝わらないのでしょうか。
どうすれば社長と社員が思いを共有し、成果に繋げられるのか。
その打ち手が「言語の共通化」です。
◆ 会社を集団から組織へ
組織は、目的と価値観を共有する人により構成されます。
会社も、社長と社員が経営理念やビジョンなどの事業目的や価値観に従い、企業活動を行う組織です。
理念やビジョンなど概念レベルでの価値観は共有できても、実践レベルでは社長と社員、上司と部下では、価値観に相違があるものです。
社長が売上総利益の増大を目的に、個々の生産性向上を訴えたとします。
しかし社員が生産性を業務の効率化と考えていたなら、具体的な売上総利益増大のアクションは生まれません。
生産性の意味を社長は、一人当たりの売上総利益。社員は、業務の効率化と捉えていれば当然の結果です。
社長は労働生産性という数値で語り、社員は定性的な概念で言葉を捉えているからです。
言語が違えば、思いも伝わらず価値観も共有できません。
鉄道信号機の保全を請負う、中小企業A社の事例です。
A社では、中期経営計画の発表ごとに「A社共通語辞典」を役員と社員に頒布しています。
経営理念 = 究極の目的であり最低限の行動規範
売上総利益 = 事業活動と報酬の源泉
生産性 = 一人当りの売上総利益
成果 = 売上総利益と生産性の向上
報酬 = 給与ではなく成果に対する対価
コミュニケーション = 成果を得る手段
などなど、言語を定義し共通化することで、社長の思いを社員に伝えています。
社長の売上総利益と生産性の向上以外に、会社の成長も社員の幸せも成しえない、との強い思いがこの共通語辞典に込められています。
「A社共通語辞典」の編集改訂作業は、社長と各部門のスタッフで行われ、すでに第3版まで頒布されています。
A社は、言語の共通化を通し経営方針、戦略の目的と意図を社員に浸透させ、経営計画の目標を達成しています。
個人の集まりが、目的と価値観を共有する組織となるか、単なる集団となるのか。
会社を成果の上がる組織に作り上げるのに、言語の共通化は有効な打ち手の一つです。
編集後記
同一労働同一賃金は、同一労働時間同一賃金なのか、同一労働価値同一賃金なのか?
言葉の捉え方次第で、経営方針や成果への影響も変わってきます。
社長の思いと意図を込めた言語共通化の作業は、会社の風土や社員の意識改革に繋がっていきます。
社長がリーダーシップを発揮するためにも、言葉の意味合いを統一することは大切なことです。
(文責:経営士 江口敬一)