経営分析の基本は分析し過ぎないこと
2022/9/20配信
「実践経営講座 No.17」
経営分析にまつわる話です。
経営分析の基本は分析し過ぎないこと
◆ 分析力は必須スキルだが
経営の場では、何事にも多種多様な分析が行われます。
経営計画の策定で先ず行われるSWOT分析、PEST分析。
決算書から収益性、安全性、生産性、成長性を把握する財務分析。
マーケティングのための3C分析、5フォース分析、バリューチェーン分析 … 。
経営計画や戦略策定など、経営判断の前提となるのが分析だからです。
分析の確度は、経営方針や実行計画とその成果に影響します。
そのため目的、目標に応じた分析手法の選択と使い方が重要となる訳です。
経営に携わるビジネスパーソンや社長を支えるコンサルタントにとって分析力は、必須スキルと言えそうです。
しかし、
分析手法やフレームワークなど分析自体にこだわり、目的を忘れる。
分析に注力し過ぎて、計画や戦略の策定が疎かになる。
分析結果に縛られ、計画の修正や新たな提案が妨げられる。
結局、分析が成果に結びつかず時間とエネルギーを無駄に使い、徒労に終わってしまう。
よくあることではないでしょうか。
◆ 分析の本質とは何か
とは言え目標を達成するためには、分析は欠かせません。
目標と現状の差異を把握できなければ、計画も戦略も立てようがありません。
分析が分析のための分析に終わるのは、分析する前提の不備、主観による歪み、文脈の欠如が原因です。
そのため分析に当たっては、以下の3点に留意が必要です。
- 何の目的で、何故分析が必要なのかを共有する。
- 定性分析では深堀をせず、思い入れや思い込みに流されない。
- 分析結果と戦略、実行計画の繋がりと関係性を明確にする。
分析の目的は目標達成の前提を整えることであり、そのための手段です。
経営目標を達成するとは、目標と現状の差異となる問題を解決し続けることです。
この命題からすれば、分析の目的は次の3点です
- 現状を分析して問題を抽出する。
- 問題を分析して課題を明らかにする。
- 課題を分析して解決策を探る。
以上の点は、分析の本質とも言えそうです。
◆ 活きた分析とは
経営資源の中でも時間は、唯一の限りある資源です。
後からお金で足したり引いたりすることは出来ません。
分析で有限の資源である時間を消耗し、利益を得る機会と実践の時間を失ってはなりません。
そのためには分析が、経営目標を達成するための問題解決の手段に過ぎないことを忘れないことです。
細部まで整えられ、フレームにきれいに収まった分析結果が、時には思考を制約し環境変化への対応遅れを招くこともあります。
分析は、問題抽出、課題明確化、解決策選択の大まかな判断材料。との割り切りも必要かもしれません。
分析の目的は何か、何をどう分け、何を明らかにし、如何にして問題解決の手段となる計画や戦略に繋げるのか。
分析の目的を忘れず「分析し過ぎない」ことが、経営目標達成に向けた「活きた分析」の基本かもしれません。
編集後記
SWOT分析、PEST分析のような定性分析は、自社でするよりはコンサルタントなど外の目でした方が、客観性がありそうです。
PPM分析などは、事業の取捨選択を迫られることもあり、第3者任せは危険かもしれません。
結果の集約が情緒的になりがちな定性分析よりは、分析結果と成果が数値で測れる定量分析の方が分析と戦略の文脈が明確なようです。
分析は、考えようと使い方次第と言えそうです。
(文責:経営士 江口敬一)